【2月19日 AFP】腸内に生息するある種の微生物が、慢性的な栄養失調に陥っている子どもの正常な発育を促す可能性があるとの研究結果が18日、発表された。世界では約1億6000万人に上る5歳未満の子どもが栄養失調に陥っているが、今回の成果は、栄養不良の子どもに対する治療法の開発につながる可能性を秘めたものだという。

 米科学誌サイエンス(Science)に発表された2件の研究では、アフリカ南東部マラウイの子どもの腸内細菌を分析、健康な子どもとの比較を行った。腸内細菌は、消化管内に生息する大量の微生物の集団。

 実験では、マラウイの子どもの便サンプルから腸内細菌を抽出、マウスに移植した。

 一部のマウスには栄養不良の子どもの腸内細菌を、別のグループのマウスには健康な子どもの腸内細菌を、それぞれ移植した。

 実験の目的は、この腸内細菌の違いが、マウスの成長にどのように影響するかを調べることだった。実験に使用した生後5週間のマウスには、すりつぶしたトウモロコシ、カボチャ、トマト、バナナ、カラシナ、インゲンマメ、ピーナッツなどの、マラウイの栄養不良の子どもが食べている食事と同様のものを餌として与えた。

 この食事の栄養量は「人間やマウスの必要量を満たしていない」と、米ワシントン大学医学部(Washington University School of Medicine)のローラ・ブラントン(Laura Blanton)氏が主導した1件目の研究は指摘している。

■体重と除脂肪体重が増加

 研究によると、5週間が経過した時点で「健康なドナーの微生物群を移植したマウスは、栄養不良のドナーの微生物群を移植したマウスに比べて、体重と除脂肪体重(筋肉、骨、内臓などの総量に相当)が有意に増加した」という。

 この体重増加は「2つのグループ間で、餌の摂取量に有意な差はなかった」にもかかわらず、健康な細菌を移植したマウスで観察されたと、研究は指摘している。

 腸内細菌は、人の食事から影響を受けるだけではなく、与えられた食事に対する人の体の反応を引き起こす一因にもなっている可能性があることを、この結果は示唆している。