【2月18日 AFP】北欧に冬がやってくると、私はカリフォルニア(California)の女の子だったらどんなによいかと夢を見始める。

 人生の半分をカナダ、もう半分をスウェーデンで過ごし、何か月も暗い中で過ごしたら、それが北半球の冬だが、あなただって日が照りつける暖かい砂浜を夢見るだろう。

 スウェーデン暮らしで厳しいのは寒さではない。ここの冬は0度前後だから、私が育ったカナダ・モントリオール(Montreal)の零下25度の極寒に比べたらずっと穏やかだ。

 打ちのめされるのは、暗さだ。

 

スウェーデン・ストックホルムの日没(2011年11月撮影)。(c)AFP/Jonathan Nackstrand

 

■頭上を覆う大きな黒いフード

 スウェーデンの首都ストックホルム(Stockholm)の真冬は、日の出は午前9時ごろ、午後2時には暗くなり始める。太陽は見えたとしても、地平線の近くに低く見えるだけ。たいていの日は曇り空で、日差しといっても、灰色の空をやや薄くするぐらいだ。

 朝、出勤する時は暗い。一日を終え、帰宅する時も暗い。

 その暗さは抑圧的にすらなりうる。まるで誰かに大きな黒いフードをかぶせられて、振り落とせなくなったみたいだ。

 

寒さのあまり耳を隠す男性(2012年2月撮影)。(c)AFP/Jonathan Nackstrand

 

 11月は暗さを本格的に感じ始める月だ。2014年11月のストックホルムの日照時間はたった5時間だった。5時間だ。

 12月21日の冬至あたりになると、日は一番短くなる。その後はだんだん日が長くなるが、4月か5月になるまで本当の変化は感じられない。その頃になると、太陽はようやく空高く上るようになる。

 

スウェーデンの日の出(2015年2月撮影)。(c)AFP/Christof Stache

 

■冬のうつ病が増える

 暗い冬の間、季節性情動障害(SAD)、つまり冬のうつ病に苦しむ人もいる。うつうつとして無気力、アルコールや甘いものの過剰摂取に走る人も多い。

 

スウェーデン・ストックホルムの港(2010年1月撮影)。(c)AFP/Olivier Morin

 

 専門家たちによれば、程度の差はあるが、スウェーデン人の最大90%がSADを患っているという。幸い、私の場合はそれほどひどいものではない(セーシェルやモルディブ、モーリシャスなどのビーチに逃れ、カラフルなパラソルの飾りがついたドリンクを飲んでいると、波が優しく私の足にかかってくることなどを日中から想像している自分にふと気づくぐらいだ…)。

 スウェーデン人は冬になると変わる。夏の間じゅう、日の当たる通りを楽しく笑顔で歩いていたのに、突然、寒さや風を避けるように頭を下げて早足になり、室内へと急ぐ。

 

スウェーデン・ストックホルムの王宮前を早足で通り過ぎる人たち(2005年2月撮影)。(c)AFP/Sven Nackstrand

 

■室内に引きこもる

 人々は(イケアの家具で飾られた)家に引きこもってネットフリックス(Netflix)ばかりを視聴して過ごすようになるため、社会生活も狭まる。

 それも納得だ。温まるために作った夕食のパスタを食べ終えてもまだ午後7時半。暗くなってからもう5時間もたっているから、もうすぐ寝る時間?外は真夜中のように真っ暗で、通りに人影も見えない。誰が外に遊びに出かけようと思うだろうか?

 勘違いしないでほしい。クラブやレストラン、バーに行けば、たくさんの人がいる。ストックホルムのナイトシーンは活気にあふれている。だが、仕事を終えて一度帰宅してからまた出かけるとなると、面倒くさいもの。夜が更けるのが早いために、スウェーデンの文化でもある、ルター派の「早寝早起き」の教えに従うのが自然に思える(早起きすれば、日照時間を最大限に活用できるというメリットもある。夜更かしをしていたら、翌朝の明るい時間を寝過ごして無駄にすることになる)。

 

スウェーデン・ストックホルムで飾られたキャンドル(2010年12月撮影)。(c)AFP/Jonathan Nackstrand

 

■外に出る

 専門家やこの状況下で長年過ごしてきた先人たちが勧める、暗い冬を乗り切るすべもある。

 最も重要なのは、日に20分でもいいから明るい時間帯に外に出て、ビタミンDを体に取り込むことだ。

 

スウェーデン・ストックホルムの雪道でベビーカーを押す人。(c)AFP/Jonathan Nackstrand

 

 スウェーデン人は週末になると、多くがアウトドアに出かける。森の中を散策したりスキーをしたり、凍った湖や河川でスケートをしたりして楽しむ。ストックホルム周辺で広い緑地があるユールゴーデン(Djurgaarden)やハガ(Haga)公園などは、ウオーキングする人やベビーカーを押す家族連れ、カップルなどでいっぱいだ。歩く途中で「フィーカ」と呼ばれるコーヒーブレイクを取るのはお約束。1週間仕事をした後、外に出て新鮮な空気を思いっきり楽しむことができる日に一日中室内に引きこもっていることは、スウェーデン人にとっては忌み嫌うべきことだ。

 

野外で(2015年1月撮影)。(c)AFP/Jonathan Nackstrand

 

■明るく照らす

 冬のうつと闘うもう一つの方法は、ライトアップだ。スウェーデン人は冬になると多くの電飾で家を飾る。とくにクリスマスの時期は、アドベント(Advent、待降節)のキャンドルがほぼすべての家や店、オフィスに飾られる。
ビルや木の枝や幹にも電飾が巻かれ、かわいいヘラジカやトナカイの形をしたライトも夜空を照らす。

 

スウェーデン・ストックホルムを照らすヘラジカの電飾。(c)AFP/Jonathan Nackstrand

 

 朝食もキャンドルの光のもとで食べることがある。私が大好きになった伝統だ。静かで薄暗いキッチンで、テーブルに置かれたキャンドルの温かい光だけを頼りに熱くて濃いコーヒーを飲むと…穏やかで厳粛な気持ちになる。

 

スウェーデン・ストックホルムに彩を添えるクリスマスデコレーション(2010年11月撮影)。(c)AFP/Jonathan Nackstrand

 

■雪を受け入れる

 時にはほとんど雪がない冬もあり、そうした冬はいつも以上に暗い。雪は光を反射して周りを照らしてくれるからだ。

 雪といえば普通寒さを意味するが、澄んだ青空と輝く冬の太陽光をもたらすこともある。

 

カラフルな冬のワンダーランドを散歩(2012年2月撮影)。(c)AFP/Jonathan Nackstrand

 

 今年の冬はあまり雪が降らなかったが、今この暗い夕方にAFPのオフィスから窓の外をのぞいてみると、大きくて湿った雪の結晶が舞い踊る様子が、街灯の光に照らされて見える。

 カリフォルニアの夢を見ていた私だが、窓から見える美しい光景に思わずほほえみ、舞い降りたばかりの雪の中を歩きたくなった。(c)AFP/Pia Ohlin

このコラムはAFPストックホルム支局の副支局長ピア・オーリンが執筆し、1月20日に配信された英文記事を日本語に翻訳したものです。

 

スウェーデン北部の教会。(c)AFP/Jonathan Nackstrand