■ジェル製の立体模型

「これにより大脳皮質が圧迫されることで、力学的不安定性が引き起こされ、それが原因で脳に局所的にひだが生じる」

「このシンプルな進化の工夫は、薄いが範囲の広い大脳皮質を小さな体積の中に押し込めることを可能にするもので、脳のひだ形成の背景にある主要因だ」

 マハデバン氏と研究チームは、脳の立体模型をジェルで作製するため、ひだのない胎児の脳の磁気共鳴画像装置(MRI)スキャンデータを用いた。大脳皮質を表すため、エラストマージェルの薄い層で模型の表面をコーティングした。

 模型を用いた実験では、脳の成長を再現するために、ジェル製の脳を溶剤に浸した。模型の外層は溶剤を吸収したことで、下層の部位に比べて膨張した。

 その後数分以内に、大きさと形状が本物と酷似したひだが現れ始めた。模型には生体組織が何も含まれていないにもかかわらず、同じプロセスが起きることが、この実験で判明した。

 米スタンフォード大学(Stanford University)生物工学部のエレン・クール(Ellen Kuhl)氏は、今回の研究に関する解説記事で、今回の成果が一連の神経疾患の診断、治療、予防における重要な前進となる可能性があると述べている。

 クール氏によると、脳のひだが大幅に少ないまたは多いと、けいれん発作、運動機能障害、知的障害、発育遅延などの原因となる可能性があるという。

 生体機構に関する要因と生物学的原因のどちらをターゲットにすべきかを知ることは、より有効な治療法の開発に大いに役立つはずだ。(c)AFP/Mariëtte Le Roux