【1月28日 AFP】フランスのクリスティアーヌ・トビラ(Christiane Taubira)法相(63)が27日、辞任を表明した。テロ関連の罪で有罪判決を受けたフランス生まれの二重国籍者から仏国籍を剥奪することを可能とする憲法改正を目指す政府の方針をめぐる「大きな政治的不一致」が理由としている。

 フランソワ・オランド(Francois Hollande)大統領は、130人が死亡したパリ(Paris)同時テロ事件を受け、この措置を憲法に盛り込むことを求めていた。マニュエル・バルス(Manuel Valls)首相は同措置の発表後、「テロ思想の名の下に他のフランス人を盲目的に殺害する者から仏国籍を剥奪するのは、国家のコミュニティーから自ら離脱した者に対する強力な象徴的行為だ」と述べた。

 だが、与党・社会党の中には、この提案を国民の一部を差別する思想的裏切り行為とみなす見方も多い。主な批判の中には、仏国籍だけを所有する者と二重国籍を持つ者との間に、分断を生むとの意見がある。トビラ法相もこの措置をめぐり大統領・首相と対立。辞任表明に合わせツイッター(Twitter)で「とどまることが抵抗することになることもあれば、去ることが抵抗になることもある」と投稿している。

 フランスの現行法では、二重国籍を持つ外国出身者が重罪の有罪判決を受けた場合、国籍を剥奪される可能性がある。だが、政治学者のパトリック・ベイユ(Patrick Weil)氏によると、この憲法改正案が通過すれば、フランスは二重国籍者の不平等待遇の原則を憲法に組み込む「世界初の民主主義国家」となる。

 トビラ氏は2012年に法相に就任したことで、フランスで最も高い地位にある黒人政治家となった。その後、人種差別的中傷の被害を繰り返し受けたことや、同性婚合法化を推進したことで、しばしば論争の中心的人物ともなった。(c)AFP/Fran BLANDY and Veronique MARTINACHE