【1月27日 AFP】「遅すぎるということは決してない」──第2次世界大戦(World War II)中のナチス・ドイツ(Nazi)によるホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を生き延びた90歳のハンガリー人、エバ・ファヒディ(Eva Fahidi)さんは、そう言ってほほ笑んだ。ファヒディさんは現在、自分よりもずっと若いダンサーと一緒にデュエットダンスの舞台に出演している。チケットは完売だった。

 ハンガリーの首都ブダペスト(Budapest)のスタジオにAFPが取材に訪れた際、美しい白髪のファヒディさんはリハーサルに臨んでいた。「最初は自分の限界ばかりを感じた。できないことばかりだと。でも、少しずつ進めていくと、素晴らしいことに歳をとった自分の体がまた何かしたがっていることに気付いた」。床の上で優雅にストレッチ運動を終えながらファヒディさんはそう語った。

Sea Lavender or The Euphoria of Being(シーラベンダー、あるいは存在することの幸福感)」と題した公演は10月の初演以来、ブダペストにある名高い劇場「ビーグシーンハーズ(Vigszinhaz)」を8回満員にした。

 そして24日には、ドイツの首都ベルリン(Berlin)での初公演に臨んだ。国連(UN)が定めた「ホロコースト犠牲者を想起する国際デー(International Holocaust Remembrance Day)」が3日後に控える中での公演となった。ナチスの強制収容所としては最大のアウシュビッツ・ビルケナウ(Auschwitz-Birkenau)が1945年に解放された日だ。

 ダンスと語りで構成された上演時間100分という長い舞台は、過去に心の傷を負った高齢女性とある若者との交流を描く。監督のレカ・ザボ(Reka Szabo)氏は昨年、ファヒディさんによる回顧録の出版記念の場で彼女の話を聞き、今回の舞台の着想を得たとAFPに語った。

「自分の人生とホロコーストについて語ったファヒディさんの話し方は、彼女は犠牲者ではなく、人生を精いっぱい生きるために過去を乗り越えようとしている一人の人間なのだと感じさせるものだった」(ザボ監督)