【1月8日 AFP】中国当局は7日、株価の急な変動を防ぐ目的で今月から導入したばかりの緊急取引停止措置「サーキットブレーカー」を停止した。この日、上海株式市場(Shanghai Stock Market)では人民元の対ドル基準値引き下げを受けて中国株が急落し、導入後の4営業日で2度目となるサーキットブレーカーが発動。世界的に株安や原油安が広がった。

 専門家は、株価急落によるパニック売りを防ごうとして安易に取引を打ち切るのは、熱を出した患者を治療するのに体温計を壊してしまうようなものだと警告する。取引停止を恐れる投資家たちは、冷静な判断を取り戻すどころか、むしろ手持ち株の売りを急ぐからだ。今週、中国はその高い代償を払うこととなった。

 サーキットブレーカーは、株価急落時などに市場の乱高下を防ぐため、一定の下げ幅が見られた場合に全取引を一時中断したり打ち切ったりする制度。中国当局は、昨年8月に上海(Shanghai)と深セン(Shenzhen)の証券取引所で起きた株価暴落が世界に波及したことから、今月1日に同制度を導入した。

 ところが、導入初日の4日に株価が7%下落してサーキットブレーカーが発動し、取引が打ち切りに。7日に再び発動して取引停止となり、効果に疑問の声が上がった。

 中国証券監督管理委員会(CSRC)は声明で、「メリットとデメリットを比較検討すると、現在のところ効果よりも悪影響の方が大きい」と説明し、サーキットブレーカーを当面停止すると発表した。

 サーキットブレーカーは欧米の株式市場の大半で導入されている。しかし、新興国市場は先進国とは事情が違うと、デンマークの投資銀行サクソバンク(Saxo Banque)のクリストファー・デンビク(Christopher Dembik)氏は指摘する。

「中国にとって最大の問題は、市場がいまだ未熟なことだ。パニック売りや取引停止で影響を受けやすい個人投資家が無数に存在している。打ち切られた取引が再開するときも、市場安定化策が伴っていないことが多い」と、同氏は述べている。(c)AFP/Angelina BOULESTEIX