【1月7日 AFP】女王バチに忠実に仕える従順で不妊性の働きバチの群れを、反逆的な生殖と君主殺害に及ぶ無秩序集団へと変貌させることのできる「引き金」を発見したとする研究結果が6日、発表された。

 英国王立協会(Royal Society)のオンライン科学誌「ロイヤルソサエティー・オープンサイエンス(Royal Society Open Science)」に発表された研究論文によると、その引き金は「蜜ろう」の中にあるという。

 階級、機能、ヒエラルキーによって身分が厳格に分けられている多くの社会性昆虫の秩序立った世界を、時に英劇作家ウィリアム・シェークスピア(William Shakespeare)の作品ばりの殺りくに満ちた騒乱状態に陥らせる要因は一体何なのか──生物学者らはこの謎に長年頭を悩ませてきた。

 今回の研究で、観察と実験の対象とされたのは、セイヨウオオマルハナバチ(学名:Bombus terrestris)だ。

 安定状態にある「社会的段階」では、セイヨウオオマルハナバチのコロニーが誇る労働効率性は、米インターネット小売り大手アマゾン・ドットコム(Amazon.com)のジェフ・ベゾス(Jeff Bezos)最高経営責任者(CEO)もうらやむほどのものだという。

 論文主執筆者で、独ウルム(Ulm)の進化生態学・保全ゲノミクス研究所(Institute of Evolutionary Ecology and Conservation Genomics)の研究者、アン・マリー・ロトラー・ヘルマン(Anne-Marie Rottler-Hoermann)氏は、「働きバチと女王バチは通常、自分の職務にただ粛々と専念しているだけ」と説明する。

 すべてが雌の働きバチは、餌の採集、幼虫の世話、巣の手入れ、潜在的な侵略者に対する防衛の維持などに無私無欲で力を尽くす。そして一方の女王バチは、働きバチの世話に身を任せ、食べ物を与えられながら、さらに多くの働きバチの卵を産む。合間に時折、雄バチを産むが、この雄バチは未交尾の次期女王候補と後に交尾する可能性がある。

 雄バチは、基本的に全くの役立たずだ。交尾以外では、コロニーの生活では何の役割も担わず、羽化してすぐにコロニーを去らなくてはならなくなる。彼らは、花蜜が豊富な花の大半がなくなる夏の終わり頃に羽化し、巣を追われて放浪する。そして通常、数日以内に死んでしまう。

 このように分業が確立していることと、生殖に関する争いがないことが「社会性昆虫が進化と生態の面で大きな成功を収めている主な理由と考えることができる」とロトラー・ヘルマン氏は指摘する。