■適応か死か

 実は、ギガントピテクスの歯には、これらの疑問に関する情報が含まれていた。

 ボヘレンス氏と国際研究チームは、歯のエナメル質に含まれる炭素同位体のわずかな変化を調査した。その結果、森の中だけに生息していた「原始のキングコング」が、完全な草食性で、タケにはそれほど関心を示さなかった可能性が高いことが分かった。

 約260万年前から1万2000年前まで続いた更新世の間の氷期において、ギガントピテクスの食物の選択範囲の狭さ(狭食性)は致命的な問題となった。

 自然、進化、そして恐らく食べたことのない食物の拒絶──これら全てが悪い方に作用し、ギガントピテクスは絶滅の運命をたどることになったとボヘレンス氏は説明する。

 ボヘレンス氏は「ギガントピテクスは体が大きかったため、大量の食物に依存していたと推測される」と話す。「更新世には、ますます多くの森林地帯がサバンナ地形に変化したため、食料供給が単純に不足した」というのだ。

 研究によると、他方でアフリカに生息していた、類似の歯を持つ他の類人猿や初期人類は、新たな環境から提供される木の葉や草や根を食べることで、同じ変化を生き抜くことができたとされる。

 しかし、体重が重すぎて木登りや枝揺らしができなかった可能性が高い大型類人猿のギガントピテクスは、何らかの理由で、食性を切り替えなかった。

「ギガントピテクスは、同様の生態学的な柔軟さを備えていなかった可能性が高く、ストレスと食料不足に耐えるための生理学的能力が不足していた可能性がある」と研究では指摘された。今回の成果をまとめた研究論文は、国際第四紀学連合(INQUA)の専門誌「Quaternary International」に掲載される。(c)AFP/Marlowe HOOD