【1月4日 AFP】香港(Hong Kong)で、中国政府に批判的な書籍を扱っていた出版社の社員5人が相次いで行方不明となっている。民主派の中核政党、香港民主党の何俊仁(アルバート・ホー、Albert Ho)主席は3日、5人が中国当局に拉致されたとの見方を示し、この出版社が習近平(Xi Jinping)国家主席の元交際相手に関する本の出版を計画していたことが背景にある可能性を指摘した。

 香港の出版社「巨流(Mighty Current)」では、昨年10月から社員4人の行方が分からなくなっている。さらに先週、社員の李波(Lee Bo)さんも行方不明となった。

 記者会見した何氏は、「香港市民は大きな怒りと衝撃を覚えている」「李さんが、政治的な理由で拉致され、違法に中国本土へ連れ去られたと確信する理由がある」と述べた。

 特別行政区の香港は、中国本土と異なる法制度下にあり、中国本土の警察権は及ばない。しかし、5人の行方不明事件を受け、中国返還後も一定の自治が認められてきた香港でも自由度が低下しつつあるとの不安がますます大きくなっている。

 何氏は、香港の銅鑼湾(Causeway Bay)にある「巨流」傘下の書店の利用客で、同書店の常連客から「巨流」が習主席が数年前に交際していた女性に関する本の出版を計画していると聞いていたという。何氏によると「巨流の経営者らに対し、この本の出版を中止するよう警告があった」という。

 李さんの妻が2日に明らかにしたところによれば、李さんは先月29日に帰宅せず、その後「すぐには帰れない。捜査に協力している」との電話が本人からあった。電話の発信元は香港と隣接する中国・深セン(Shenzhen)の番号だったという。

 行方不明となっている他の社員3人も、深センで行方が分からなくなったとみられている。残る1人はスウェーデン国籍で、タイ訪問中に姿が見えなくなり、バンコク(Bangkok)スウェーデン大使館と中国政府が行方を捜していると報じられている。(c)AFP