【1月4日 AFP】南アフリカで体重わずか1200グラムの未熟児として生まれたパトリックくんは、母乳バンクのおかげで一命をとりとめた──。南アフリカの経済力は大陸トップだが、それでも子どもの死亡率は高い。

 南アフリカ・ケープタウン(Cape Town)出身の母親バートレットさんは、まだ母乳が出ず、粉ミルクは未熟児の赤ちゃんの腸を傷つける可能性があった。そのため、生後2週間の間は、見知らぬ女性たちから寄付された母乳を生き延びるために当てにするしかなかった。

 母乳バンクの原則はいたってシンプルだ。母親たちから寄付された母乳は、検査・低温殺菌される。そして必要とする赤ちゃんたちに配る。

 国連児童基金(ユニセフ、UNICEF)によると、生後6か月間の乳児の生存率は、粉ミルクよりも母乳の方が約14倍高いという。

 しかし南アフリカでは、蔓延する貧困と粉ミルクメーカーのマーケティングを背景に、母乳で育てられる乳児の割合はわずか7.4%にとどまっている。金銭的に余裕がない場合、母親は出産後すぐに仕事に復帰する必要がある。これは、いわゆる正規雇用でないために、産休がもらえないことがその背景にある。

 2011年までは、母親から子どもへのHIV(ヒト免疫不全ウイルス)感染を予防するとの目的で、粉ミルクが無料で配られていた。このことが、母乳よりも粉ミルクの方が良いという先入観を高める一因にもなった。

 同国保健省が最近発表した報告書によると、同国での栄養問題は、同等の所得水準にある他の国と比べて深刻でだという。また2013年に確認された乳幼児の死亡率は1000人中32.8人で、これはエジプトやアルジェリア、インドネシアなどの国々に比べてはるかに高かったという。

 同報告書は、「母乳を与えられない乳児の死亡率を低下させる効果的な手段として、母乳バンクの向上と支援が行われるべきだ」と指摘している。(c)AFP/Béatrice DEBUT