【1月3日 AFP】2016年米大統領選挙の共和党候補者指名争いで首位を走る不動産王ドナルド・トランプ(Donald Trump)氏によるイスラム教徒の米国入国禁止措置発言が、ソマリアの国際テロ組織アルカイダ(Al-Qaeda)系イスラム過激派組織アルシャバーブ(Shebab)の勧誘ビデオに使用されたと、米テロ組織監視団体SITEが2日、明らかにした。

 SITEによると、アルシャバーブはトランプ氏による先月7日の発言を利用し、勧誘ビデオで欧米諸国に居住するイスラム教徒に聖戦を呼びかけたという。

トランプ氏は、カリフォルニア(California)州の過激派夫婦が14人を殺害した事件後に行ったスピーチで、米国がイスラム教徒による暴力の問題を「明らかにして理解することが可能になるまで」、イスラム教徒の米国入国を「完全に禁止する」ことを提案した。

 アルシャバーブのビデオでは、米国生まれのイスラム教指導者、故アンワル・アウラキ(Anwar al-Awlaki)師が、米国在住のイスラム教徒に「西洋の抑圧的環境を逃れ、イスラムの国へ向かえ」と呼びかける説教の後に、トランプ氏の演説が編集されている。

 米国がアルカイダの上級構成員だったとするアウラキ氏は2011年、同国による無人機攻撃によりイエメンで死亡した。

 SITEによると、50分あまりのビデオは黒人の若者を標的にしたもので、マルコムX(Malcolm X)や警察に対する抗議行動、白人至上主義者による演説の映像を使用し、イスラム教に改宗してソマリアでの戦闘に参加することを促している。

 ビデオではナレーターが「米国では、基本的人権や正義、許容性、法規則などがイスラム教徒には適用されない」と話し、米国をイスラム教徒に攻撃的な国と表現している。

 トランプ氏の扇動的発言は世界中で怒りを買い、民主党の大統領選指名候補を狙うライバル、ヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏は、トランプ氏の発言が過激派の思い通りのものだと警告した。

 昨年12月に行われた民主党候補者による討論会で、クリントン氏はトランプ氏を「ISIS(イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」別称)最高の勧誘者」と呼び、ISは「さらに多くの過激派を勧誘するために、ドナルド・トランプがイスラム教および同教徒を侮辱するビデオを使うだろう」と述べていた。

 トランプ氏はその後、クリントン氏が嘘をついていると反撃したが、クリントン氏の報道官はISのネット上の行動を監視する団体からの情報として、トランプ氏の発言が「ISISのソーシャルメディアで勧誘の宣伝用に使用されている」と主張したものの、米国の報道機関はクリントン氏の主張を実証する映像を発見できていなかった。(c)AFP