■「ロボットは過去のもの」

 同じくMITの科学者であるスカイラー・ティビッツ(Skylar Tibbits)氏は、この「向かう先」を「セルフ・アセンブリー」──つまり「自己組み立て」と考えている。

 自分で組み立てるといっても、箱で買ってきた組み立て式のベッドを、マニュアル片手に格闘しながら自分で組み立てることではない。ティビッツ氏のいう自己組み立てとは、ベッドであれ何であれ、自分で勝手に組み上がることを指す。

 これこそが、ティビッツ氏が専門とする「4Dプリント」の概念だ。3Dプリンターがスイッチ一つで立体物を製作できるものだとすれば、4Dでは、モノ自体が便利に変形したり、並び替わったりするのだという。

 ロボットとは違い、こうした素材はコンピューターを内蔵しているわけではなく、電力などの動力源も必要としない。圧力や熱、水といったありきたりの力に反応し、事前に「決定」された通りに姿を変える。

 例えば靴やタイヤを、濡れた時には滑りにくく、乾いたら普通に戻るように作ることができる。ティビッツ氏が率いるMITの自己組み立て研究室では、この技術を将来、より大きな物体に適用し、ひいては建築にも活用する方法を模索している。

 すこし不気味な話となるが、「次の、そのまた次の最先端」とコエリョ氏が呼ぶ技術もある。それは装着式どころか、チップやWiFi機器を人体の中に直接埋め込む技術だ。同氏は、この技術について「テクノロジーは徐々に皮膚の中へ、さらに皮膚の裏側へと移行していくだろう。この分野に関する研究を行っているが、まだあまり語ることはできない」と述べている。

 ただ、あらゆる技術革命は新たなリスクをはらむ。例えば、新技術が犯罪者や独裁政権といった悪の手中に落ちることもそうだ。このことについて、コエリョ氏は「どのような技術でも、底なしに邪悪なものに驚くべき力を与える危険性がある」と強調する。

 同氏は、1945年に米国が日本に対して使用した原子爆弾を「マンハッタン計画(Manhattan Project)」の名の下に開発した科学者らを引き合いに出し、「世界最高の知能を結集して、全人類を滅亡してしまえるマシンを生み出してしまった」と指摘する。革新のフロンティアに立つ科学者たちは、揺るぎない良心を備えていなければならないと警鐘を鳴らした。(c)AFP/Sebastian Smith