【12月23日 AFP】オーストリアで約200年前に「きよしこの夜(Silent Night)」が誕生した時、このクリスマス・キャロルが、後に世界中で歌われることになるとは、思いもよらなかっただろう。今年も歌手マイリー・サイラス(Miley Cyrus)や、スウェーデンのヤギたちまでもがこの曲を歌っている。

 この曲が初めて演奏されたのは、1818年のクリスマスイブ。オーストリアの小さな町の教会で、船で働く労働者とその家族たちに披露された。

 日本語やウェールズ語、ペルシア語を含め、300の言語や方言に訳されている歌詞は1816年、ヨゼフ・モール(Joseph Mohr)司祭が作詞した。

 その2年後、モール司祭は、近隣の村のオルガン奏者で聖歌隊の指揮者も兼ねていた、教師で友人のフランツ・クサーヴァー・グルーバー(Franz Xaver Gruber)氏に依頼し、詩に曲を付けてもらった。

 グルーバー氏がその願いをかなえた12月24日、2人は夜にザルツブルク(Salzburg)近郊の町、オーベルンドルフ(Oberndorf)で行われる教会ミサで、一緒にその曲を歌うことを決めた。言い伝えによると、教会のオルガンはネズミにかじられて壊れていたため、モール司祭はギターを弾いた。

 その後、長い年月が過ぎた1854年、グルーバー氏は「クリスマスキャロル『きよしこの夜』の起源についての本当の話」と題する本を書き、その中で「広くみんなに受け入れられた」と回想している。曲の人気は雪だるま式に広がったが、この曲が実際にどのように広まったかは、ちょっとした謎だ。

 重要な役割を担ったのは、この曲をチロル(Tyrol)州のツィラータール(Zillertal)村に持ち帰ったオルガン技師のカール・マウラヒャー(Carl Mauracher)氏とされている。そこで2つの巡業合唱団がこの歌を採り入れ、欧州各地から米国にまで渡って演奏した。

 元はドイツ語の歌だったが、すぐに英語版が現れた。キリスト教宣教師らにより広められ、19世紀の終わりにはすべての大陸で歌われるようになった。それ以降、この曲は、ビング・クロスビー(Bing Crosby)やエルビス・プレスリー(Elvis Presley)といった歌手により何百回もレコーディングされ、大成功を収めた。

 今年はマイリー・サイラスが歌っている他、慈善団体アクション・エイド(Action Aid)のスウェーデン版で、ヤギが「メー」と鳴く声で構成した新バージョンが、アルバム「オール・アイ・ウォント・フォー・クリスマス・イズ・ア・ゴート(All I want for Christmas is a Goat)」の一部としてリリースされた。(c)AFP/Simon STURDEE