【11月27日 AFP】米大統領選の予備選では、一般大衆の歓心を買おうとした候補者から突拍子もない発言が飛び出す事例は珍しくない。しかし、共和党の指名候補争いで首位を走るドナルド・トランプ(Donald Trump)氏がますます扇動的な放言を連発する中、党内のライバル候補は包囲網を強め、保守派の論客からも同氏を「ファシスト」呼ばわりする声が上がり始めた。

 最も物議を醸しているのは、トランプ氏が米国に住むイスラム教徒の登録制導入を支持すると表明したことと、2001年の9.11米同時多発テロの際にニュージャージー(New Jersey)州でアラブ系住民が歓声を上げるのを見たと、根拠もなく主張したことだ。

 あまりに好戦的な態度に、トランプ氏が民主主義的な価値観を尊重しているのかどうか疑問視する声が共和党内からも上がっている。

 専門家は、トランプ氏によって共和党が長期にわたるダメージを被る恐れがあると指摘。仮に同氏が共和党の指名を獲得した場合、大統領選では民主党候補指名争いをリードするヒラリー・クリントン(Hillary Clinton)氏に敗北を喫するのは必至だと警告する。

 こうした状況下、トランプ氏の候補指名を阻止する必要があるとの認識で、共和党の複数の選挙チームが手を組みつつあるようだ。名の知られた保守派の論客も、強い言葉でトランプ氏を批判し始めた。

「宗教的信条に基づいて米国市民に連邦登録制度を強制するのは、ファシズムだ」。ジェブ・ブッシュ(Jeb Bush)元フロリダ(Florida)州知事の国家安全保障顧問を務めるジョン・ヌーナン(John Noonan)氏は、こう言い切った。予備選で苦戦を強いられているブッシュ氏自身も25日、米テレビ局FOXニュース(Fox News)に、トランプ氏は特にイスラム教徒に関する辛辣な発言で「別次元の世界」を作り出していると述べた。

 一方、米紙ニューヨーク・タイムズ(New York Times)は24日付の論説で、ここ1週間の予備選について「ドナルド・トランプ氏の人種差別的なうそ一色だった」と評した。

 報道によれば、共和党内ではトランプ氏を非難・攻撃するネガティブ・キャンペーンに乗り出す動きが出ている。既に共和党候補の1人、ジョン・ケーシック(John Kasich)オハイオ(Ohio)州知事は、トランプ氏をナチス・ドイツ(Nazi)と関連付けるオンライン広告キャンペーンを開始した。(c)AFP/Michael Mathes