【11月19日 AFP】アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議が開催されたフィリピン・マニラ(Manila)で19日、抗議デモを解散させようとした警察が米人気歌手ケイティ・ペリー(Katy Perry)さんの楽曲を大音量で流す「作戦」に出た。デモ参加者の中にはこの対応に激怒する人もいた一方、音楽を楽しむ人の姿も見られた。

 バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領をはじめ21か国・地域の首脳が一堂に会した会議場の外には、左派の抗議デモに数百人が集結。シュプレヒコールを叫ぶデモ隊が警察機動隊の列を突破しようとしたことから、もみ合いになった。

 警察側はまず放水砲で応じ、続いて「秘密兵器」を持ち出した──ケイティ・ペリーさんのヒット曲「ロアー~最強ガール宣言!(Roar)」を巨大スピーカーから大音量で流し、デモ隊のシュプレヒコールをかき消したのだ。

 警察は続けて、ドリー・パートン(Dolly Parton)さんの「アイランズ・イン・ザ・ストリーム(Islands in the stream)」、デヴィッド・ゲッタ(David Guetta)さんの「セクシー・ビッチ(Sexy bitch)」、ビージーズ(Bee Gees)の「愛はきらめきの中に(How deep is your love)」など、ヒット曲を次々と流した。

 さらに一部の警官は楽曲のリズムに合わせて警棒で盾を叩き出し、現場のビート感はいや増す展開となった。

「ばかばかしい」。ソウル音楽の定番曲「マイガール(My Girl)」が流れる中、AFPの取材に応じたある左派議員はこう述べた。デモ参加者の多くも、APECの推進する自由貿易政策とグローバリゼーションへの抗議を表明しようと集まった人々の声を消そうとした当局の対応に怒りの声を上げた。「われわれは主張を届けたかっただけだ」と、マンゴー農家の男性(64)は語った。

 だが一方で、楽曲を楽しんでいるデモ参加者の姿も見られた。

 マニラ警察はAFPに対し、音楽を流した目的は緊張の緩和だったと主張。「フィリピン人は総じて音楽が大好きだ。それに音楽は、誰にとっても気持ちを落ち着かせる効果がある。抗議行動に対するわれわれの寛容方針にぴったりだ」と説明した。(c)AFP/ Joel GUINTO