【11月16日 AFP】フランスの首都パリ(Paris)で13日に起きた連続襲撃事件で、同国で起きた事件では初めて使用された自爆ベストについて、情報・治安活動の専門家らは、高度な技能を持つ職人が作ったものであり、製造者は欧州内で現在も逃亡中の可能性があると指摘している。

 実行犯の7人全員が同じ爆弾付きベストを着用し、自爆を躊躇(ちゅうちょ)する様子がなかった事実は、フランスを標的とするイスラム過激派の懸念すべき戦術の変化を示している。彼らが使った類の自爆ベストは通常、中東地域の爆破事件で使われてきた。

 AFPの取材に匿名で応じた元フランス情報機関トップの人物は「自爆ベストの製造には軍需品の専門家が必要だ。確実で効果的な爆発物の製造は、誰にでもできることではない」と述べた。

 フランス当局によると、ベストは過酸化アセトン(TATP)を材料にして作られたとみられる。TATPは素人でも容易に自家製造が可能だが、極めて不安定な物質だ。ベストにはさらに、電池と爆破ボタンが搭載されていた他、被害を最大化するため金属片が入れられていた。

 AFPが取材した3人の専門家はいずれも、ベストの製造者は襲撃の実行犯グループに含まれていないとみている。

 仏情報機関「対外治安総局(DGSE)」のアラン・シュエ(Alain Chouet)元局長は「爆発物専門家はあまりにも貴重な存在だ。襲撃には決して参加しない」と語った。「だから、この人物は今もどこかにいる」

 元DGSE職員で現在は企業保安の分野で働くピエール・マルチネ(Pierre Martinet)氏は「爆弾製造者は、使い捨てにはされない」「さらに多くの自爆ベストを製造し、他の連中に作戦を実行させるのだ」と述べた。(c)AFP/Michel MOUTOT