■「動いたら殺す」

「床に流れる血や、人々が私の上に倒れる衝撃を感じた。銃弾で飛び散った木片が私に当たった。しかし2階席では何が起こっているのか誰も気付いていなかった」。こう語ったウィールズさんは今、ホールで起きた「理解不能な」出来事に打ちのめされている。

 フィリップ(Philippe)さん(35)は、「襲撃犯らは群衆に向かって発砲し、逃げようとする人たちに『動いたら殺す』と言った」と話した。襲撃犯らが「俺たちは死ぬ」「お前たちに起こっていることは、お前たちの過ちのせいだ。われわれはシリアの兄弟たちの復讐をしているのだ」と話すのを聞いたという。

 捕らわれていると徐々に気づき始めた聴衆らは、できるだけ身を隠すよう努めた。しかし、携帯電話が鳴り、その直後に銃撃されるという光景がほぼ15秒ごとに繰り返された。

 立ち上がって脱出しようとする人たちを見たラバランさんは自分も脱出しようと決意した。しかし、新たな銃撃が起こったため「腕で頭を抱え込み、音響板の近く」の床に戻ったという。

「私はそれ以上動けなかった。息さえしないように務めた。私の隣に『俺たちはみんな死ぬんだ』と言い続ける酔っ払った男がいたので、数人で静かにするように彼にささやいた。うめき声を上げている人たちもいた……恐ろしかった」とラバランさんは付け加えた。

 もう1人の生存者、アントニー(Anthony)さんは、ホールの奥にいたという事実が自分の命を救ってくれたと語る。

 アントニーさんは移動する群衆によって床に倒された。「30秒と20分の間」だったという時間が過ぎた後に頭を上げると、「覆面をしていない、銃を手にした、ひげの生えた男」が整然と発砲しているのが見えたという。「とどめの一発を覚悟した」

「その時、誰かが襲撃犯らが立ち去ったと叫んだ。誰もが逃げようとした。私は大きな血だまりで滑った。私たちははって進み、倒れた人々を乗り越えた」とアントニーさんは続けた。

 警官の姿を見たラバランさんは、襲撃犯と間違われないように両手を頭に載せ、カウンターに向かって走った。

 ウィールズさんとフィリップさんは、襲撃犯らが2階席に行った機会を捉えて脱出した。フィリップさんは、「襲撃犯らはバルコニーから1階席に向けて撃ち始めた。彼らが銃に再装填(そうてん)する隙に私は立ち上がって走った。出口まで走って、そのまま地下鉄の駅まで止まらなかった」と語った。(c)AFP/Eve SZEFTEL