【11月13日 AFP】イスラエルとパレスチナ間で激化する暴力に関する10月14日水曜日の記事の中で、その襲撃事件について触れたのは、短い1段落だけだった。

 その日の午後7時頃、エルサレム(Jerusalem)の中央バス乗り場で、1人のパレスチナ人の男がポケットからナイフを取り出し、イスラエル人の女性を突き刺した。女性は軽傷、男は即座に治安部隊に殺された。このような襲撃事件は、現在のように緊張高まるイスラエル、とりわけエルサレムではいつでも起こり得る。

 AFPエルサレム支局の記者になって2年近く、私はこのような襲撃を10回以上取材してきた。もはや取材の手順が決まっているほどだ。まず現場にできるだけ近づき、群衆をかき分け、同僚のフォトグラファーを見つける。それからメモ帳を片手に救急士たちの後を追い、目撃者を探し、地面に何か痕跡が残されていないか見て回り、犠牲者の名前、そして時に加害者の名前も入手し、怒れるデモ隊の到着を見守る。これらすべてを行うのと同時進行で、支局と連絡を取り続ける。私の仕事は、何が起こったかを把握し、それを文字に起こすことだ。どれだけ現場に近づこうと、記者としての距離を保つ。私は部外者であり、当事者ではない。

 だが約2週間前のあの水曜日、その距離は吹き飛び、私はこういうことが起きたのだと自分が感じたことを文字にしなかった。

エルサレム、19歳のパレスチナ人の男が、25歳のユダヤ人男性を刺した現場、血痕を消すイスラエルのボランティアたち(2015年10月8日撮影)。(c)AFP/GALI TIBBON