【11月4日 AFP】(一部更新)暴力団を引退して10年、竹垣悟(Satoru Takegaki)氏(64)は現在、元構成員たちが一般社会での生活に適応できるよう定職を探す手助けを日々行っている。

 後に4代目山口組組長となる竹中正久(Masahisa Takenaka)氏のボディーガードを務めていた竹垣氏は、日本の暴力団の世界に近年最大の分裂劇が起きている今、現状に不満を抱く、より多くの構成員が、自らが主宰する更正支援団体を訪れることを願っていると話す。

 日本最大の指定暴力団・山口組(Yamaguchi-gumi)は今秋、10団体を超える直系組織が別組織を結成するという大規模な離反劇に揺れた。この分裂は1980年代の山一抗争の再現を恐れる警察を警戒させたと同時に、厳しい組織内統制で知られた山口組の内部抗争と影響力の低下を露呈させた。

「一時の快楽はあってもね、全体的に考えたら、暴力団社会におって得られるもんは何もないからね」──竹垣氏は山口組の本拠地からそう遠くない自らの故郷の姫路市で、AFPの取材に関西なまりの太い声で答えた。「暴力団として表立って活動できる世の中じゃないですわね。時代が、暴力団という存在を求めてないんやろね」

 山口組の分裂をめぐっては、経済不況と構成員の減少による打撃を受け、暴力団対策法の指定組織にもほころびが生じている事実を浮き彫りにしているとの見方がある。さらに、そうした組織の活動に対する世論の寛容度も低くなる中、いわゆる「半グレ集団」のように比較的に組織化の低い勢力が、従来の暴力団のテリトリーに入り込んで来ているともされている。

 日本の組織犯罪に詳しいノンフィクションライターの溝口敦(Atsushi Mizoguchi)氏は「分裂したことでこっち(神戸山口組)もさらに寿命を縮めているというか、全体を通してみれば日本の暴力団の地盤沈下は争えない事実だ」と話す。

 戦後の混乱期より、街の秩序を保ち、物事を迅速に進めるために──たとえそれが問題ある手段だとしても──必要悪として社会に許容されてきた暴力団だが、今や賭博から薬物、売春、高利貸し、金銭の暴力的要求行為、知能犯罪までも手掛ける数十億ドル規模の犯罪組織へと成長した。