【10月26日 AFP】幼いころに世界で最も武装が厳重といわれる国境を単身越えて、パキスタンで迷子として保護された耳が不自由で口の利けないインド人女性が26日、家族かもしれない男性と対面するため、十数年ぶりに祖国への帰国を果たした。

 現在20代前半とみられるギータ(Geeta)さんは、11歳か12歳のころ、インドからパキスタン東部ラホール(Lahore)へ向かう列車に1人で乗っているところを警察に保護された。間違って列車に乗ってしまったとみられる。

 身元を確認できる書類などは一切所持しておらず、家族や暮らしていた場所もはっきりおぼえていないか説明できなかったため、ギータさんはそのままパキスタンにとどまり、同国最大の慈善組織エディー財団(Edhi Foundation)の計らいでカラチ(Karachi)にある保護施設で暮らしてきた。「ギータ」という名前も、財団のスタッフが付けてくれたものだ。

 26日、慈善活動家らに付き添われてインド・ニューデリー(New Delhi)の空港へ到着したギータさんは、インド政府から贈られた花束を受け取り、ほほえみを浮かべた。

 空港では、ギータさんの兄として名乗り出ているビノッド・クマール(Vinod Kumar)さんが出迎えた。クマールさんは、集まった報道陣に「会うことができて、心から喜んでいる。長い間、待っていた。ギータと家族を再会させてくれた両国に感謝したい」と語った。

 今回ギータさんがインドへ帰国するきっかけとなったのは、インド政府がギータさんに送った1枚の写真だ。写っていた同国東部ビハール(Bihar)州の一家について、ギータさんは今月初め、自分の家族かもしれないと返答した。

 インド外務省によると、今後DNA鑑定を行い、クマールさんの家族と一致すれば家族のもとへ帰ることになる。ただ、クマールさん一家の話では、行方不明となっている娘は当時すでに結婚し、子どもが1人いたという。一方、ギータさんは発見時まだ10代になったばかりだったと考えられている。

 インド当局は、DNA検査の結果が一致しなかった場合、ギータさんはインドで「適切な施設」に入所することになると説明している。

 ギータさんの家族探しは長年続けられてきたが、今年8月、インド・ボリウッド(Bollywood)でギータさんの境遇とよく似た女性が主人公の映画が大ヒットしたことで、ギータさんも脚光を浴びるようになった。インド政府はギータさんの帰国実現を約束し、ギータさんこそ行方不明の娘かもしれないと多数の家族が名乗り出たという。(c)AFP/Jalees ANDRABI