【10月23日 AFP】中国版「ノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)」を目指している「孔子平和賞(Confucius Peace Prize)」の今年の受賞者に、ジンバブエのロバート・ムガベ(Robert Mugabe)大統領が選ばれた。ムガベ大統領は人権侵害などで繰り返し非難されている人物だが、孔子平和賞の創設者は22日、同氏を選出した理由について語った。

 孔子平和賞を運営しているのは「中国国際和平研究センター(China International Peace Studies Centre)」というほぼ無名の組織。同組織を創設したシャオ・ダモ(Qiao Damo)氏がAFPの取材に応じ、ムガベ大統領の選出理由について、世界平和への「卓越した貢献」が評価されたと語った。

■候補には国連事務総長や韓国大統領ら

 90歳代のムガベ大統領の他に孔子平和賞の最終候補に挙がっていたのは、富豪のビル・ゲイツ(Bill Gates)氏や潘基文(バン・キムン、Ban Ki-Moon)国連(UN)事務総長、韓国の朴槿恵(パク・クネ、Park Geun-Hye)大統領ら9人という。「彼(ムガベ大統領)が1980年に権力を獲得しなかったら、彼が役割を果たさなかったとしたら、とてつもない才能が無駄遣いに終わったことだろう」と、シャオ氏は語った。

 孔子平和賞は中国で投獄されている反体制派作家、劉暁波(Liu Xiaobo)氏がノーベル平和賞(Nobel Peace Prize)を受賞した2010年に、中国側が突如、設立した。これまでの受賞者には、ロシアのウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領やキューバのフィデル・カストロ(Fidel Castro)前国家評議会議長らがいる。ムガベ大統領は過去数十年にわたって中国と密接な関係を持ってきた。

■受賞理由「ジンバブエの政治・経済の秩序築いた」

 9月の受賞者発表の際、委員会はムガベ大統領の受賞理由として「ジンバブエの国民のため、同国の政治と経済の秩序構築に尽力した」ことや、ムガベ大統領が「汎アフリカ主義とアフリカの独立性を強く支援」してきたことを挙げた。

 人権団体やジンバブエの野党政治家は、ムガベ大統領政権のもとでジンバブエ経済の崩壊や厳しい弾圧が行われたと非難しているものの、孔子賞の主催者らはこれらの意見を一蹴した。

 シャオ氏は、ムガベ大統領には「ジンバブエを安定化する能力」があるだけでなく、アフリカ連合(African Union)の議長として「アフリカの平和を推進する」ことができると語る。

「社会不安はごく普通のこと。米国も建国時は非常に混迷していた。ジンバブエは30年前に建国したばかりだ」

 一方、野党・ジンバブエ人民民主党のゴーデン・モヨ(Gorden Moyo)幹事長は、地元ニュースウェブサイトで孔子平和賞を「狂気」と非難。「(主催者は)平和の使者のふりをする殺人者を表彰したことを恥じて首をつるべきだ」と批判した。

 孔子平和賞の授賞式は12月に行われる。賞金は50万元(約950万円)で、シャオ氏によると、ある実業家が資金を提供したという。中国外務省は、孔子平和賞について「政府とは無関係」としている。

■「東洋文化」からノーベル平和賞にバランスを

 孔子平和賞の設立理由についてシャオ氏は、ノーベル賞が「あまりに極端で事実と合致しない」と述べ、「儒教文化の観点から」ノーベル賞に対してバランスをとるために設立したと語った。

「ノーベル平和賞は西洋文化の土台の上に作られている。だがわれわれの平和賞は東洋文化の土台の上に作られている」とシャオ氏は述べた。(c)AFP