【10月19日 AFP】グローバル化する世界の中で国外居住といえば、オーストラリアや英国の若者が大陸を飛び回り、海外に根を下ろす姿を見かけるようになって久しいが、フランスの若者はこれまで「奥手」だった。

 しかしフランス国立統計経済研究所(INSEE)が先週発表した統計によると、2006~13年に国外へ移住するフランス人の数は14万人から20万人に増え、そのうち80%が18~29歳の若者だという。

 経済協力開発機構(OECD)の国際移民の担当責任者ジャンクリストフ・デュモン(Jean-Christophe Dumont)氏によれば、フランスの若者を世界の探検に駆り立てているのは「より開かれた世界、語学力の向上、広がった留学の選択肢」だという。

 一方で、国内経済の停滞や高い税金、失業者の急増なども要因として挙がっている。野党・保守派は国外移住の増加に飛びつき、高い税金など社会党政権の政策が若者を追い出している証拠だと批判する。「息が詰まりそうな税金と行政地獄」から逃げ出したという、リーガルコンサルタントのニコラ・ポワリエさん(32)はそうした野党の懸念の代表例だ。

「私はフランスをただの制約といら立ちの国としかみていない、(フランス国外の)他の場所であれば生きる喜び、そして何より自由がある」と話すポワリエさんは、4年前、カナダのモントリオール(Montreal)へ移り住む際、すべてを売り払って後ろを振り返らなかったという。

 仏議会の報告によると、現在、国外で暮らしているフランス人は少なくとも200万人。国民全体の2.6%だが、ドイツの4.6%や英国の6.7%と比べれば少ない。

 フランスの2015年の経済成長率の予測はわずか1.1%で、失業率は10%前後となっているが、デュモン氏は、同国の移住増加は、経済危機で国外移住がもっと進んでいるイタリアやスペイン、ギリシャとは状況が異なるという。同氏は「今、われわれが見ているのは、動きが弱かったフランスの国外移住の歴史に対する『巻き返し現象』だ」と話す。

 実業家のフレデリック・モンタニョンさん(38)はベンチャー企業を立ち上げ、今は米ニューヨーク(New York)に住んでいる。フランスは「沈みかけた船」だという見方を跳ね返す一人だ。ニューヨークに来たのは「個人的な冒険」のため、それからずっと大きな市場にアクセスするためだとモンタニョンさんはいう。とはいえ、モンタニョンさんは、技術チームはフランスに残しているし、母国フランスへの思いは極めて肯定的だ。

 またモンタニョンさんは、国外に住むフランス人が増えるのはいいことだとも考えており、「あちこちにいるようになって、ようやく『影響ある文化』について話せるんじゃないかな」と語った。(c)AFP/Fran BLANDY and Charlotte PLANTIVE