■「奇妙な組み合わせ」

 同じくネイチャー・コミュニケーションズ誌に発表されたもう1件の研究では、英ケント大学(University of Kent)のトレーシー・キビル(Tracy Kivell)氏率いる研究チームが、同じ洞窟で見つかった別のホモ・ナレディ個体のほぼ完全な右手の骨を調査している。

 調査の結果、ホモ・ナレディの手も足と同様に、他のどのヒト科動物にもみられない、原始的な特徴と現代的な特徴との混在が起きていることが分かった。

 論文は、手首と親指が「道具の意識的、常用的な使用」の明白な証拠を示していると結論付けているほか、同時に、細長い指は、その持ち主が木の枝から枝に飛び移るのに慣れていたことを意味しているとしている。

 樹上で暮らす猿人と初期人類とに共通する身体的特徴をめぐっては、初期段階の進化の名残なのか、直立歩行を新たに始めたヒト科動物種に不可欠なものだったのかで、科学者らの見解が分かれている。

 ホモ・ナレディの研究では、後者の説が後押しされている。

「ホミニンの手が複雑な操作に十分に適応してからも、まだ多くの時間を木登りをして過ごしていたホミニンもいたことを、この1本の手は示唆している」とキビル氏は指摘する。

 だが、多様な能力も、種の成功の保証にはならなかった。

 ホモ・ナレディは、ヒト属に分類される他の大半の初期人類種とともに、進化の行き詰まりを迎えた。「より完全に近いホミニン化石の最近の発見がわれわれに何かを教えてくれたとすると、それは、骨格全体でみられる、より発達した現生人類的特徴とより未発達の猿人的特徴との奇妙な混在が、例外ではなく標準となっていた可能性が高いということだ」とキビル氏は話している。(c)AFP/Marlowe HOOD