【10月5日 AFP】バーチャル・リアリティー(仮想現実、VR)はゲーム好きにはたまらなく魅力的なものだが、今、この技術を娯楽だけでなく、教育や医療、建築、教育など、より幅広い分野で活用しようという動きが活発になっている。

 米フェイスブック(Facebook)傘下のオキュラスVR(Oculus VR)社が開発したオキュラス・リフト(Oculus Rift)や、ソニーの「PlayStation VR」といったVRヘッドセット登場で、来年はバーチャル・リアリティーの技術を利用したゲームが主流となりそうだ。

 しかし、その一方では、ゲーム以外のより「有益」な分野でVRヘッドセットを普及させようと精力的に取り組む開発者たちもいる。

 オーガニック・モーション(Organic Motion)の創始者で最高経営責任者(CEO)のアンドルー・チェスノク(Andrew Tschesnok)氏は、ユーチューブの動画ブロガーから米テレビCNNまで、動画を利用する人すべてが同社にとっての潜在的な顧客と話す。

 オーガニック・モーションは、リアルタイムで仮想現実コンテンツを作り出す世界初のスタジオと自負する企業で、9月には米サンフランシスコ(San Francisco)で開催されたイベント「TechCrunch Disrupt」に、VR技術に特化した革新的企業の1つとして参加している。

オーガニック・モーションが手掛ける機器には、人の動きや画像を3Dでとらえるカメラが搭載されており、捉えたものをリアルタイムで仮想現実の動画に組み入れることができる。チェスノク氏は、この技術を使えば、捜査官がコンピューター上で再現された犯罪現場に入るといったこともできるようになるかもしれないとコメントしている。

 このオキュラス・リフトを使い、仮想世界でカスタマイズされたアバタ―を通して人と会話ができるソフトを開発したのは、ITベンチャーVRChatだ。カナダの大学では昨年、このVRChatの技術を用いた初の授業も行われている。

■「3Dスカイプ」

 VR技術を応用することで、アバタ―を通してではなく「3Dスカイプ」のように、実際に相手のリアルな姿を見ながら会話することもできる──そのように話すのは、VR関連の新興企業2社の共同創設者、レミ・ルソー(Remi Rousseau)氏。

 ルソー氏が立ち上げた2社のうちMimesys社は、ヘッドセットをつけた2人の人間がバーチャルな会議室でテーブルに着くといった疑似体験を可能にする機器開発を行っている。

 もう1社のSurgevryは、手術の際、外科医が頭部に装着するバーチャル・リアリティー・カメラを開発。カメラがとらえたVR動画は、自社製品の正しい使用方法を説明するのに、このような動画を活用したいという医療機器販売業者向けなどで既に販路が確保されている。

 建築業界もVR技術の有望市場だ。ベンチャー企業のInsiteVRは、建築家やインテリアデザイナーが顧客に、ウェブ上で仮想の建築物の内部を見せることができるサービスを提供する。共同創設者のエンジェル・セイ(Angel Say)氏によると現在の顧客数は30に上るという。費用は寝室が1つの仮想アパートで200ドル前後(約2万4000円)。

 市場調査会社トラクティカ(Tractica)によると、VR機器・VRコンテンツ関連の世界全体の市場規模は、業務用の需要を受けて成長し、2020年までに218億ドル(約2兆6000億円)に達する見通しだ。(c)AFP/Sophie ESTIENNE