【10月4日 AFP】浜辺に毎日大挙して押し寄せている難民や移民にとって、ギリシャのレスボス(Lesbos)島は欧州における安全で明るい将来への第一歩だ。しかし第2次世界大戦(World War II)以来の深刻な移民問題は、予想外の環境問題を新たに引き起こしているーー人々が到着時に捨てていった、山のような救命胴衣とゴムボートの処分だ。

 移民の上陸地点となっているレスボス島北部沿岸スカラシカミニアス(Skala Sikaminias)では、市職員らが浜辺に放置された救命胴衣とゴムボートをトラックに積み込んで撤去している。廃棄物処理担当の当局者は、「終わってもまたどこかに積み上がっているので、きりがない」とため息をついた。

 市は12人増員し、トラック2台とクレーン1基を投入して、連日撤去作業に取り組んでいる。大量の救命胴衣とゴムボートは、暫定措置としてさらに北のごみ置き場に保管されている。最終的な処理方法が決まるまでは、ここに留め置かれる予定だ。ただ、市の車両は道路が整備されている地点しか入れないため、車で行けない入江には廃棄物が散乱している。

 当局者によると、こうした廃棄物を処理する方法にはリサイクル以外にない。プラスチックは消火用水を入れるタンクに再生できるが、「その作業を請け負う用意がある会社が見つかっていない」(当局者)という。

■ネットオークションに出品

 浜辺で取材している記者や、難民支援のため集結しているボランティアらにとって、捨てられた救命胴衣はある種の戦利品になり得る。当局者は、人道支援活動の資金を募る目的で、インターネットの競売サイト「イーベイ(eBay)」に出品された胴衣もあると指摘する。

 当局者は「問題は胴衣が実際に命を救えたかどうかだが、とんでもない粗悪品だ」と語り、急場しのぎで生産されたトルコ製か、安い中国製だと付け加えた。あるアフガニスタン人の男性(22)は、トルコで購入した7ユーロ(約940円)の救命胴衣について「ものすごく薄っぺらで、丈夫ではなかった」と振り返る。

 国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)の統計によると、今年地中海を横断して欧州にたどり着いた人々は50万人余りで、うち31万人余りはギリシャに上陸。3000人近くは地中海横断中に死亡したか、行方不明になっている。(c)AFP/Catherine BOITARD