【10月5日 AFP】メキシコ人のヘスス・アセベスさん(41)は自分を見つめる人々の視線に慣れることはないかもしれない。しかし、アルコール依存症と、サーカスで見せ物とされてきたつらい数十年間に終止符を打ち、ある決意を固めた。毛で覆われた自分の顔を手で隠すのを止めたのだ。

 アセベスさんは多毛症という非常に珍しい病気にかかっている。多毛症は「オオカミ人間症候群」とも呼ばれ、顔や体の毛が過剰に生える症状だ。これまでに50例しか確認されておらず、そのうち男性7人、女性6人の13人は、メキシコ中部サカテカス(Zacatecas)州ロレト(Loreto)出身の一家族の人々だ。アセベスさんもその一員。これまでの人生で社会的にさまざまなつらい体験をしてきた。幼いころから「なぜ、神様は僕をこんな風に作ったんだろう。なぜ、僕は違うんだろう」と自問してきた。

 そのうち人目を避けるために顔を覆って歩く癖がついた。同級生にからかわれ、いじめられ、体毛を引っ張られるなどして、学校は中退してしまった。13歳でアルコールに頼るようになり、その後、依存症に長年悩まされるようになった。同じ多毛症のいとこ2人と稼ぐために英ロンドン(London)のサーカスに入った。日給は約8ドル(約950円)だった。

 遺伝子変異による多毛症は、毛が過剰に生えることの他には症状はない。しかし仕事に就いたり、買い物に出かけたり、友人や恋人を作ることがとても難しくなる。「機会を与えてはもらえない。ただ人と違うというだけで」とアセベスさんはAFPに語った。