【9月25日 AFP】オーストラリア南部で22日夜、高速で走行する自動車と衝突したコアラが、かすり傷程度で生き延び、英国の有名冒険家にちなんで「ベア・グリルス(Bear Grylls)」と名付けられた。

 運転手のローレン・デービスさんによると、雄のコアラは、アデレード(Adelaide)の南東約20キロでサウスイースタン・フリーウエー(South Eastern Freeway)を渡ろうとして車と衝突し、車のバンパーとフロント「グリル」の間に挟まった。

 デービスさんは、街灯がない暗がりで制限速度の時速100キロほどで運転し、隣の車線と後方にも車が走行していた。ヘッドライトに照らされたコアラを発見してブレーキを踏んだものの、衝突を避けることができなかった。

 デービスさんはAFPに「3台の自動車が事故を起こさないためには、コアラをひくしかなかった」と語った。動揺するなか車を止めたものの、コアラを見つけることはできず、そのまま10分かけて帰宅したという。

「ガレージに入って明かりをつけたら…コアラがいた」と、デービスさんは振り返る。「とても動揺した。死んでると思った。(婚約者が)駆け寄って、『生きてる、生きてるよ』と言った。コアラは頭と腕を動かしていた」。後に「ベア・グリルス」と呼ばれるこのコアラは、車の前部から垂れ下がっている状態だったという。

■時速100キロではねられるもかすり傷程度

 野生生物保護ボランティアで野生生物保護団体「ファウナレスキュー・オブ・サウスオーストラリア(Fauna Rescue of South Australia)」のコアラホットラインの電話交換手を務めるアン・ビッガムさんによると、ビッガムさんの夫がデービスさんの自宅まで車で行き、救急動物病院にコアラを連れて行った。診療の結果、コアラは「非常に良好な状態で、かすり傷程度」であることが分かったという。

 ベア・グリルスは体重約11キロで、4歳前後。現在はビッガムさんの自宅で、他の救助されたコアラ7匹とともに生活している。順調に回復しており、新鮮なユーカリの葉を楽しんでいるという。

 グリルスは25日、交通事故現場のそばで自然に返される予定。(c)AFP