【9月22日 AFP】石器時代初期に人間の活動によって引き起こされた重金属汚染の最古の痕跡が、スペインと英国領ジブラルタル(Gibraltar)にある洞窟で発見された。政府当局が21日、発表した。

 英科学誌ネイチャー(Nature)系オンライン科学誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表された研究結果は、先史時代の人間が、たき火、煙、灰などによる高濃度の重金属で汚染された洞窟に居住していたことを示している。このことは、環境汚染に対する耐性獲得の一因となった可能性があるという。

 高濃度の銅、鉛、ニッケル、亜鉛などの重金属類が発見されたのは、スペイン南端の小さな英自治領ジブラルタルにあるゴーラム洞窟(Gorham's Cave)。この洞窟では、保存状態が良好なネアンデルタール(Neanderthal)人の炉跡が見つかっている。発見をめぐり、ジブラルタル自治政府は「これは、人的活動に起因する重金属汚染の、知られている限りで最古の証拠だ」との声明を発表した。

 論文によると、重金属汚染の痕跡はこの他にも、たき火に由来するものがジブラルタルのバンガード洞窟(Vanguard Cave)で、方鉛鉱の使用に関連するものがスペイン南部エル・ピルレホ(El Pirulejo)で、それぞれ発見されたという。方鉛鉱は、顔料の原料やビーズに加工する素材として用いられた硫化鉛だ。研究チームは、論文で言及されているこれらの遺跡が「考古学的遺跡における重金属類による汚染の最古の証拠」を構成するものと指摘している。

 他方で論文は、「汚染度が高かったにもかかわらず、汚染土壌は、現生人類ホモ・サピエンス(Homo sapiens)集団に重大な脅威をもたらさなかった可能性がある」ことにも言及。「ここに提示したデータは、たき火や煙とそれらの灰によって、ホモ・サピエンスが重金属元素に長期間さらされたことを示しており、このことは環境汚染耐性に一定の役割を担った可能性がある。こうした影響は、これまで見過ごされてきた」と記されている。(c)AFP