【9月16日 AFP】美しく陽気なマデリーン・スチュアート(Madeline Stuart)さん(18)は、彼女の名前を冠したハンドバッグ・ブランドもあるプロのモデルだ。注目すべき点は、スチュアートさんがダウン症患者であることだ。

 オーストラリアで生まれ育ったマデリーンさんは13日、米国でモデルとしてニューヨーク・ファッションウイーク(New York Fashion Week)に出演。リゾートウェアとドレス姿で2回、ランウエーに登場した。

 このショーにダウン症のモデルが出演するのは初めてではないが、母親のロザンナ(Rosanne Stuart)さんは、堅苦しく近寄りがたいファッション界が徐々に多様な女性たちに開かれつつある表れだと話し、「マデリーンにこうしたチャンスが与えられるのは素晴らしいこと」だと娘の参加を祝福した。

 ショーの舞台裏では、マデリンさんが話した言葉をロザンナさんが言い直す。マデリンさんの言葉は他の人には聞き取りにくいからだ。マデリンさんは注目を浴びるのが好きで、舞台裏でもはしゃいでいる。

 このショーはイタリアのブランド「FTL MODA」と「クリストファー&ダナ・リーヴ基金(Christopher and Dana Reeve Foundation)」、ファッション業界に多様性をもたらす活動を展開する英団体「モデルズ・オブ・ダイバーシティ(Models of Diversity)」が共催している。

■よりオープンな社会

 マデリーンさんのモデルとしてのキャリアは、母親のロザンナさんが5月にマデリーンさんの写真をフェイスブック(Facebook)に投稿したことがきっかけとなって開かれた。写真はネット上で瞬く間に広まり、投稿からわずか1週間で2万人のフォロワーを獲得。現在では50万人近くがマデリンさんのページを支持している。

「グロスガール(Glossigirl)」という化粧品メーカーのイメージモデルを務めると、1か月前にFTL MODAからコンタクトがあり、ニューヨーク・ファッションウイークへ招かれた。マデリーンさんの名前をブランド名にしたハンドバッグも発売され、売り上げは全米ダウン症協会(National Down Syndrome Society)に寄付されている。

 ロザンナさんによれば、マデリーンさんは幼少の頃、障害のあることで公園でいじめられたり、仲間はずれにされたりといった差別を受けることが全くなかったという。「みんなが物事にずっとオープンになっている。ソーシャル・メディアによって、あらゆることが表で語られるようになり、触れずに隠しておくことがなくなっている」。ロザンナさんは、他のダウン症の子どもたちの親がマデリーンさんの活躍を見て、自分たちの子どもの人生にも希望を持ってもらえたら幸いだと語った。

■義手のモデル

 同じショーには義手をはめたレベッカ・マリーン(Rebekah Marine)さん(28)も出演した。マリーヌさんは米ニュージャージー(New Jersey)州出身で車の販売員をしている。生まれつき右腕がないが「義手のモデル」と呼ばれることを誇りに思っているという。

 美しいダークブラウンの髪をしたマリーンさんは、日焼けした肌に素晴らしい笑顔で健康そのもの。ハイファッション界でもてはやされる細身で脚の長い彫像のようなタイプではない。子どもの頃からモデルになるのが夢で、母親と一緒にオーディションや写真撮影会を訪れたが、いつも断られていた。「ファッション業界は進歩したと思う。今だって、八頭身でものすごくスリムで、目は青く髪はブロンド──これに当てはまらないモデルの採用を多くのブランドはかなりためらっていると思う。だからこれは挑戦だけど絶対に進歩はしていて、自分がその一部だってことは素晴らしい」

 マリーンさんは最先端の義手「i-limb」の広告塔も務める。I-limbのセンサーのおかげで、マリーンさんは指を自由自在に動かし、ヨーグルトの入った容器をつかんだり、ナイフとフォークで肉を切ったりすることも
できる。「今夜、命が終わるとしても、私は世界一幸せな人間よ。人にインパクトを与えてるって思うし、みんなの人生をよくしたいから」。マリーンさんはこう語った。(c)AFP