【9月10日 AFP】ロシアを代表する作曲家、イーゴリ・ストラビンスキー(Igor Stravinsky)が作曲し、100年間所在が不明とされていた重要な作品が、露サンクトペテルブルク音楽院(Saint Petersburg Conservatory)で見つかった。同音楽院関係者が9日、AFPの取材に明らかにした。

 露北西部の都市サンクトペテルブルク(Saint Petersburg)にある同国最高峰の音楽学校である同院のストラビンスキー専門家、ナタリア・ブラギンスカヤ(Natalia Braginskaya)氏は「ストラビンスキーが1908年に作曲、紛失を悔やみ、自身の初期の最高傑作の一つとみなしていた葬送曲が、本校の書庫で奇跡的に発見された」と語った。

 ブラギンスカヤ氏によると、施設の移転に先立ち、司書がそれまで見過ごされていた山積みの楽譜を整理していた際、この12分間の管弦楽曲を発見。「彼女はすぐに私を呼び、2人で確認したところ、それが葬送行進曲のオーケストラスコアであることが分かった」。同氏は長年、この作品を捜していたという。

 この葬送曲は、ストラビンスキーが作曲の指導を受けたロシアのクラシック音楽作曲家、ニコライ・リムスキー・コルサコフ(Nikolai Rimsky-Korsakov)を追悼して書かれた作品だ。曲が演奏されたのは1度きりで、ストラビンスキーは後に、1917年のロシア革命の際に楽譜が行方不明になったことを悔やんでいた。

 ストラビンスキーは、1910年に仏パリ(Paris)の舞台で演奏されたバレエ曲「火の鳥(Firebird)」により名声を一気に高めたが、この作品はそれより前に作曲されていた。ブラギンスカヤ氏によると、「ストラビンスキーはこの作品を、自身の最高傑作の一つとみなしていた」という。

 ブラギンスカヤ氏は、「音楽院は1896年以来移転しておらず、いまだに膨大な数の音楽作品が未整理のまま、書庫に埋もれているかもしれない」と話した。(c)AFP