【9月9日 AFP】米国の研究チームは8日、体内で拡散するがん細胞を捕捉する極小の体内埋め込み型医療機器(インプラント)を開発したと発表した。現段階では、マウス実験で効果が示されているという。

 一般的に「転移」と呼ばれるプロセスでは、最初に発生したがんの部位から細胞が移動して他の臓器でがんが発生する。この発見の遅れによって、患者が命を落とすケースは少なくない。

 血流に含まれる「血中循環腫瘍細胞(CTC)」の早期発見は、診断と救命治療を迅速化する可能性がある。だが、CTCはごく少数単位で、多くの場合長期間にわたって血中を循環してから新たな部位に定着するため、発見することが非常に困難となっている。

 英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に発表された今回の研究は、CTCの捕捉が、がん細胞の拡散とがんの転移を防ぐ助けになる可能性を示唆したものだ。

 論文共同執筆者で米ノースウエスタン大学(Northwestern University)のロニー・シェー(Lonnie Shea)氏は、AFPの取材に「インプラントを移植したマウスは、インプラントを移植しなかったマウスに比べて、肺における疾病の負担が著しく軽減された」と語った。

 今回の実験で、シェー氏と研究チームは、直径約5ミリの生分解性の円盤を作製し、マウス1匹につき2枚を体内に埋め込んだ。

 免疫細胞をおとりとして用いるこのインプラントには、捕捉された細胞の存在を検出するためのスキャナーが搭載されている。

 シェー氏は「これらを組み合わせて用いるシステムにより、転移性疾患の早期発見が可能になっている」としながら、「第1の恩恵は、転移の発見。体全体に広く拡散する前に転移が見つかる」と説明した。また拡散した細胞による疾病の負担が軽減できることにより、効果的な治療が行えるであろう期間の延長も可能になることが考えられるとしている。

 さらなる恩恵としては、インプラントで転移性がん細胞を収集して分析することにより、最適な治療法の特定が容易になることが挙げられる。

 実験用マウスで得られた今回の成果は、人間で再現不可能と考える理由は何もないとシェー氏は指摘する。「細胞が新たな臓器に移植するという考え方の本筋は、マウスと人間との間に違いはない。詳細の一部は変わるかもしれないが、これを元にして人間用インプラントの設計を構築できると考えている」と述べ、人間のがん患者を対象とした臨床実験を早期に開始できることを望んでいると話した。(c)AFP