【9月4日 AFP】トルコの浜辺に遺体となって打ち上げられ、その写真が世界中に衝撃を与えている3歳のシリア人男児の父親が3日、ギリシャを目指していたボートが沈没した際の様子を述懐し、「子どもたちは私の両手の間を滑り抜けていった」と語った。

 男児の父親の名は、トルコメディアではアブドラ・クルディ(Abdullah Kurdi)さんと報じられているが、シリアの情報筋はアブドラさんの姓をシェヌ(Shenu)だとしている。アブドラさんは、写真に写っていたアイラン(Aylan Kurdi)君に加え、4歳のガレブ(Ghaleb Kurdi)君と妻のリアナ(Rihana Kurdi)さんを一度に失った。

 アブドラさんはトルコの通信社ドーガン(Dogan)に対し、乗っていたボートが沈み始めた時の様子を語った。「私は妻の手を握っていました。子どもたちは私の両手の間を滑り抜けていった。暗くて、みんな叫んでいました」「小さなボートにしがみつこうとしましたが、空気が抜け始めていました」

 2日に起きた事故では、ギリシャのコス(Kos)島に向かっていた2隻の船がトルコ海域で沈没し、シリア人12人が水死した。エーゲ海(Aegean Sea)では移民が犠牲となる同様の事故が相次いでいる。

 だが世界の注目は、遺体となってトルコのリゾート地ボドルム(Bodrum)の浜辺に打ち上げられたアイラン君に向けられた。その写真は瞬く間に世界中に拡散し、難民が直面している悲劇のシンボルとして受け止められた。

 現地のAFPカメラマンによると、ボドルムの遺体安置所の前では3日、うつろな表情で座って携帯電話を見つめながら、家族の遺体を納めたひつぎが自治体の車両にのせられるために出てくるのを待つ、悲しみに満ちたアブドラさんの姿が見られた。

 トルコメディアによると、アブドラさんは家族と他のシリア人3人と共に、昨年にクルド人部隊とイスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が1か月にわたって戦闘を繰り広げたシリアのアインアルアラブ(Ain al-Arab、クルド名:コバニ、Kobane)からの脱出を試みていた。