【9月2日 AFP】地球温暖化は、海の食物連鎖で重要な役割を担う微生物に、逆戻りできない変化を生じさせるとの研究結果が1日、発表された。

 温室効果ガスの二酸化炭素(CO2)の大気中濃度の上昇は、シアノバクテリア(藍色細菌)と呼ばれる微生物をターボチャージャー付きの窒素処理機械のような存在に変えることが今回行われた実験で示された。

 研究を主導した米南カリフォルニア大学(University of Southern California)のデービッド・ハッチンス(David Hutchins)教授はAFPの取材に「これは、海の窒素サイクルを根本的に変えると思われる」と述べ、「一部の微生物は、不可逆と思われる方法で、未来の環境変化に適応する可能性があることを、今回の研究結果は示唆している」と説明。CO2濃度が、現在の水準以下に戻ったとしても、シアノバクテリアは元通りの状態にはならないというのだ。

 海の食物連鎖の最下層に位置する極小の浮漂植物である植物プランクトンは、さまざまな形で窒素を取り込む。窒素は、窒素分子(N2)の形態で大気中と水中に最も豊富に存在するが、これは植物にとって「消化」──つまり窒素固定が最も困難な形態でもある。

 20億年近く前から存在するシアノバクテリア数種のうち、優れた窒素固定能力を持つ1種は、全世界に豊富に分布する「トリコデスミウム(Trichodesmium)」だ。トリコデスミウムが大気中の窒素分子を固定すると他の植物プランクトンには別の形態の窒素源が確保されることになる。

 また、気候変動に起因するシアノバクテリアの進化は、動物プランクトンの個体数増加にもつながる。これについてハッチンス教授は、動物プランクトンが植物ブランクトンからの窒素摂取に依存しているためとAFPの取材で語った。

 このことは、大気中CO2の量を減少させる一助となる可能性もある。しかし大気中のCO2の量は、今後数十年間にわたり排出量削減に取り組んだとしても、今世紀末までに倍増する可能性が高いとされている。