■「怖くはなかった」

 ヨルダン川西岸のラマラ(Ramallah)に近いナビサレハは長年、イスラエルとパレスチナの対立の場となっている。毎週金曜にはパレスチナ人や外国人に一部イスラエル人も加わり、近くにあるユダヤ人入植地ハラミシュ(Halamish)に抗議するデモが行われている。デモの参加者がよく行うのが投石で、対するイスラエルの治安部隊は催涙ガスやゴム弾を使用する。デモの参加者によれば、過去3年間で2人が死亡、負傷者は375人に上っており、うち約半数が未成年者だという。

 映像に登場する少年、ムハンマド・タミミ(Mohammed Tamimi)君の父親、バッセム(Bassem Tamimi)さんによると、ムハンマド君がギプスをはめているのは、自分の村でイスラエルの戦車から逃れようとした際に手首を骨折したからだという。

 ムハンマド君はAFPの取材に対し「怖くはなかったけれど、大きな声で家族を呼んで、兵隊を離してと助けを求めた」と話した。母親のナリマン(Nariman Tamimi)さんは「息子から兵士を引き離すこと、これしか頭になかった」と語った。

 タミミ一家はナビサレハで行われている抗議行動の先頭に立ってきた。父親のバッセムさんはこれまでに9回、拘束されている。映像の中でアニメのキャラクターTシャツを着ているムハンマド君の姉、アヘド(Ahed Tamimi)さんは、イスラエル兵に向かってこぶしを突き上げた写真がきっかけとなり、2012年にトルコのレジェプ・タイップ・エルドアン(Recep Tayyip Erdogan)首相(現大統領)の招待を受けた。

 一方、イスラエル人の間では、タミミ一家は子どもを危険にさらす扇動者だと非難する論調もある。状況に詳しいイスラエル軍幹部は、ナビサレハでのデモは「人目を引くための行動だ」と述べ、参加者は「死者が出かねないほどの投石で兵士を挑発し」、兵士が対抗せざるを得ない状況を作り出していると非難している。(c)AFP/Hossam Ezzedine with Laurent Lozano in Jerusalem