【8月31日 AFP】ロシア西部サンクトペテルブルク(Saint Petersburg)で、建物の正面に飾られていた100年の歴史を持つ悪魔メフィストフェレス(Mephistopheles)のレリーフ(浮き彫り)が破壊される事件があり、市内で30日、1000人以上が集まって抗議デモが行われた。ロシアではウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)大統領の下で、宗教的に不寛容な傾向が高まっているとの懸念が広がっている。

 レリーフは先週、サンクトペテルブルクが帝政ロシア時代の首都だった当時から市中心部にある建物の正面から引きはがされ、破壊された。「サンクトペテルブルクのコサック(Cossacks of Saint Petersburg)」と自称する正体不明の集団が犯行声明を出しており、警察は宗教的動機に基づいた破壊行為とみて捜査している。

 被害を受けたレリーフに刻まれた羽を広げた悪魔の姿は、メフィストフェレス役で有名だったロシアの伝説的オペラ歌手、フョードル・シャリアピン(Feodor Chaliapin)をたたえて1910年に制作されたものだと言われている。

 30日のデモでは、建築保存の専門家など1000人を超える人々が現場の建物の前に集まり、「恥知らずの破壊行為」だと非難した。「芸術に手をかけるな」と訴えるプラカードや、英語で「私たちのサンクトペテルブルクを救え」と書かれたプラカードもみられた。

 犯行声明を出した集団「サンクトペテルブルクのコサック」は、公開書簡でレリーフについて「あからさまな悪魔崇拝」を奨励しており、教会の教義に反するため容認できないと主張している。ただ、市内に昔からある複数のコサック組織は、この集団を知らないと述べている。コサックはかつて帝政ロシア時代の国境警備を担っていたが、現代では保守的な価値観を広める運動をよく行っている。

 一方、大きな権威をもつロシア正教会は広報を通じ、今回の破壊は理解できる行為だと擁護を表明した。

 ロシアでは今月、首都モスクワ(Moscow)でも数か所の彫刻の展覧会が「ロシア正教の教徒を侮辱している」として、ロシア正教の原理主義運動の活動家らの襲撃を受けていた。(c)AFP