【8月28日 AFP】その動画はまるで、一人称視点で敵を撃つFPSゲームのようだった。ピストルを握った手が画面に現れ、女性が視界に入ると、銃弾が発射される。

 だがこれは、ゲームではなかった。このぞっとするような映像は、問題行動のため2013年にバージニア(Virginia)州のテレビ局WDBJを解雇されたベスター・リー・フラナガン(Vester Lee Flanagan)容疑者が、テレビの生中継中だったWDBJの記者とカメラマンを殺害した際の様子を撮影したものだ。

 銃撃の際にテレビの生中継を視聴していた人は多くなかった。だが、現場から逃走したフラナガン容疑者がツイッター(Twitter)にコメントを次々と投稿し、ネット上で犯行映像を公開すると、インターネットユーザーたちは、それがわずかな時間だったとしても、この凶悪犯罪を一人称視点で目にすることができた。

 IT市場調査会社エンドポイント・テクノロジーズ・アソシエーツ(Endpoint Technologies Associates)のロジャー・ケイ(Roger Kay)氏はAFPの取材に対し、「われわれは、インターネット時代における新たな一ページを開いているようだ」「これは間違いなく新境地だ」と語った。

 ケイ氏によると、これまでイスラム過激派組織「イスラム国(Islamic StateIS)」が人質を斬首する動画の公開にソーシャルメディアを利用してきたが、今回の動画は、個人的な動機に基づいて行動する「フリーランサー」がこの衝撃的な公開手法を用いた初の事例だという。

 WDBJの生中継は、撃たれたカメラマンを見下ろす犯人のおぞましい姿を写した後、テレビ局側によって早急に切り上げられ、スタジオであ然とする女性アナウンサーの映像へと切り替えられた。

 だが事件の数時間後、ブライス・ウィリアムズ(Bryce Williams)の別名でも知られるフラナガン容疑者が撮影したとみられる56秒間の映像が、ツイッターのアカウント「@Bryce_Williams7」やフェイスブック(Facebook)上に投稿され、瞬く間に拡散した。