【8月26日 AFP】フランスの検察当局は25日、先週発生した高速列車襲撃未遂事件で逮捕された男がイスラム過激思想に傾倒しており、犯行の準備を周到に行っていたことを示す証拠が多数見つかったと発表した。

 パリ(Paris)検察のフランソワ・モラン(Francois Molins)首席検事によると、モロッコ国籍のアイユーブ・ハッザーニ(Ayoub El Khazzani)容疑者(25)は21日、オランダ・アムステルダム(Amsterdam)発パリ行きの国際高速列車にベルギー・ブリュッセル(Brussels)から乗車した際、カラシニコフ自動小銃や銃弾270発、ルガー自動拳銃、ガソリンが入った容器、カッターナイフなどを持ち込んでいたという。

 ハッザーニ容疑者は、武装して上半身裸でトイレから出てきたところを、同じ列車に乗り合わせていた休暇中の20代前半の米国人兵士2人とその友人、そして62歳の英国人コンサルタントによって取り押さえられた。4人にはフランスの最高勲章レジオン・ドヌール(Legion d'Honneur)が授与されている。列車内ではまた、仏米の二重国籍を持つ男性1人が銃撃を受けて負傷した。

 モラン首席検事は「標的を絞り周到に計画されていた」事件だったとの見解を表明。ハッザーニ容疑者が取り調べに対し強盗目的だったと供述していることについては「極めて信じ難い」と述べた。同容疑者は警察の尋問への返答を徐々にはぐらかすようになり、25日には完全に黙秘し始めたという。

 さらにモラン首席検事は、ハッザーニ容疑者がテロ計画の一環とした「殺人未遂」容疑での捜査対象となっている根拠を示す多数の証拠の概要を発表した。それによると、同容疑者は5月にトルコへ渡航し、6月に同国南部の町から空路でアルバニアに戻った。トルコは「シリア入りへの中継地だった可能性がある」という。また事件の直前に自身の携帯電話で、「イスラム過激思想の名の下で暴力行為を呼び掛ける」動画を見ていたことも判明しているという。

 また、ブリュッセルでは路上生活をしていたと話しているにもかかわらず、149ユーロ(約2万円)のファーストクラス切符を購入できた点にも疑問が残るとしている。駅の切符販売員らは捜査当局に対し、ハッザーニ容疑者は現金で支払い、空席のあったより早い出発便への変更を断ったと話しており、これも標的があらかじめ注意深く絞られていたことを示唆するものだとしている。

 また同容疑者が、武器と携帯電話を事件の前夜に寝ていた公園で見つけたと主張していることを「ばかげている」と一蹴。さらに、事件の翌日となる22日、同容疑者のフェイスブック(Facebook)ページが理由は不明ながらも閲覧不能になったことも明らかにした。(c)AFP/Eric RANDOLPH