【8月25日 AFP】素晴らしい生物の多様性で知られるエクアドル領ガラパゴス諸島(Galapagos Islands)が、エルニーニョ(El Nino)現象がもたらす大きな脅威に直面している。

 非常に幅広い種類の植物や動物の生息が維持されている同諸島は、国連教育科学文化機関(UNESCO、ユネスコ)の世界遺産にも指定されている。しかし、その繊細な生態系は、エルニーニョに伴う強風や豪雨、海水温の上昇に耐えられない可能性がある。

 気候変動によるこうした脅威は、とりわけガラパゴス諸島にのみ生息するウミイグアナにとって喫緊の問題だ。ウミイグアナは陸地で生活するが、餌は海で採取する。ガラパゴス国立公園(Galapagos National Park)の海洋研究ディレクター、エドゥアルド・エスピノサ(Eduardo Espinoza)氏(46)は「ウミイグアナは海藻しか食べない。エルニーニョの時期はその藻が減少し、多くが死ぬかもしれない」という。

 エルニーニョとは3~5年に1度、太平洋(Pacific Ocean)の熱帯域の海面の温度が急上昇する現象のことを指す。気象学者たちは、数か月前に直近のエルニーニョの観測を始めたが、温暖化のせいでエルニーニョがガラパゴスを直撃する頻度や強度が数年のうちに上昇するのではないかと恐れている。

 ガラパゴスは世界最大級の自然保護区の一つであると同時に、最も繊細で地球上のどこよりも固有種が多い地域の一つだが、ガラパゴスの生態系がエルニーニョに破壊されるのは、今回が初めてではない。1997年と98年、エルニーニョはガラパゴスに壊滅的な被害を与えた。サンゴ礁、ペンギンやアシカのコロニー、飛ばないウミドリたちの巣、そしてウミイグアナが大量に死滅した。

 イグアナの個体数が回復するには数年かかった。2001年、その数はようやく70万匹前後に戻った。人的要因による環境汚染、気候変動、エルニーニョがなければ、ウミイグアナは60歳程度まで生きると科学者たちはいう。

 エスピノサ氏は、今回のエルニーニョの影響は長引く可能性があると語る。数か月にわたって来年まで続くと予想する専門家たちもいる。

 ガラパゴスの生態系にとってエルニーニョ以外のもう一つの懸念は、貝殻や火山岩、砂まで土産として持ち帰ろうとする観光客だ。今月にはエクアドル人の女性が砂10キロを持ち出そうとして、空港で拘束された。同公園の生態系ディレクター、ダニー・ルエダ(Danny Rueda)氏は「観光客の行動には驚かされる。彼らは、他の場所なら許されていることだと言うが、ここでは許されない」(c)AFP/Héctor Velasco