【8月25日 AFP】インフルエンザの多様なウイルス株に対して有効に作用するワクチンの開発に向けた大きな一歩を踏み出したとする研究論文2件が24日、世界的に権威のある学術誌にそれぞれ発表された。

「万能ワクチン」は、インフルエンザに対する予防接種の取り組みの至上目標となっている。世界保健機関(World Health OrganizationWHO)によると、絶えず形を変えるインフルエンザウイルスにより、毎年最大50万人が死亡しているという。

 20世紀には、壊滅的な大流行が世界規模で数回発生している。1918年のスペイン風邪の大流行では、2000万人以上の命が奪われた。

 既存のワクチンは、常に突然変異を繰り返すインフルエンザウイルスの一部をターゲットとしているため、製薬会社や保健当局は毎年、新しいワクチンを調合する必要がある。

 英医学誌「ネイチャー・メディスン(Nature Medicine)」と米科学誌サイエンス(Science)で発表された2件の研究では、インフルエンザウイルスの従来のワクチンとは異なり、より不変性が高い部分を再現する最新ワクチンを、マウス、フェレット、サルなどを用いてそれぞれ試験した。

 この不変性の高い部分とは、インフルエンザウイルスの表面にあるスパイク状のタンパク質「赤血球凝集素(ヘマグルチニン、HA)」の茎部。先端の「頭部」が変化してもほぼ同じ状態のままであることが、科学者らの間では長年知られていた。

 だがこれまで、この茎部を用いて実験動物や人間で免疫反応を誘発することは不可能だった。この免疫反応によって、ウイルスは無力化されるか、体が感染細胞を攻撃して破壊することが可能となる。

 今回の研究で、米国立衛生研究所(US National Institutes of HealthNIH)ワクチン研究センターのハディ・ヤシン(Hadi Yassine)氏率いるチームは、HAの茎部を用いて免疫反応を発生させるために、「フェリチン」と呼ばれるナノ粒子サイズのタンパク質を、頭部のないHA茎部に「接ぎ木」した。