■「パブを超えたクィアな空間」

 一方、ゲイ向けの店を守ろうとする人々に言わせれば、そこは単なる社交の場以上の意味を持っている。1月に閉店し、開発業者に売られたロンドン東部の「ジョイナーズ・アームズ(Joiners' Arms)」では、警察とゲイコミュニティーとの会合、HIV検査、資金集めのイベントなどが開催されていた。

 活動家たちはまた、同性愛事情をめぐる楽観的な見方を批判し、同性愛嫌悪に基づいた犯罪の増加や、政府の緊縮政策の一環として同性愛者コミュニティーへのサービスが削減されていることを指摘している。

「社会の寛容さが高まっているように見えるのは良いことだが、すぐに揺り戻しが起きる可能性があることは歴史が証明している」と、ウォルターズ氏は言う。

 彼は「すべてのゲイバーを何としてでも保全すべき」と訴えているわけではない。だが、ロンドンの過度な商業的圧力が、LGBTが集えるような新しいタイプの場の誕生を難しくしていると語る。

「パブやバーを超えた、たとえばアートやコミュニティー会館などのクィアな空間が必要だ。だがこれは、物事を前進させるのはもちろん、われわれが手にしたものを守る闘いでもある」と、彼は語った。

 一方、ロイヤル・ボクソール・タバーンでは、パフォーマーのウルスラ・マルティネス(Ursula Martinez)さんがフラメンコ風の衣装を身にまとい、セックスと人種についての歌で観客を笑いの渦に巻き込んでいた。

 マルティネスさんが「ビバ・ラ・リベラシオン・セクシュアル!ビバ・ラ・インテグラシオン・クルトゥラル!(性の解放に万歳!文化融合に万歳!)」と叫び、ギターをかき鳴らし終えた頃には、パーキンスさんは、もっとなじみのある場所を求め姿を消していた。(c)AFP/Mohammed ABBAS