【8月14日 Relaxnews】北極圏にあるノルウェー領スバルバル(Svalbard)諸島のスピッツベルゲン(Spitsbergen)島では、かつてソビエト連邦によって建設され、現在はゴーストタウンと化した炭鉱の町が観光客の人気を集めている。

 背後にそびえるピラミッド型の山にちなんで「ピラミデン(Pyramiden)」と名付けられたこの町は1998年に放棄されたものの、現在もロシア企業が所有している。

 この町を管理するのは、「サーシャ(Sasha)」という愛称で知られるアレクサンドル・ロマノフスキー(Alexander Romanovskiy)さん(33)。サーシャさんの肩に掛けられたライフル銃は、最近までこの町の唯一の「住人」だったホッキョクグマに出くわした際に備えてのことだという。サーシャさんは「5月以降はホッキョクグマを見かけていないが、いつ出没するか分からないからね」と話す。

 1927年、ソビエト連邦がこの島にある小さな炭鉱をスウェーデンから買収した。サーシャさんによると、1936年に最初の定住者たちがやって来た。だが、住民たちは第2次世界大戦(World War II)の初期に英国軍によって退去させられたため、採掘が本格的に開始されたのはニキータ・フルシチョフ(Nikita Khrushchev)が旧ソ連の最高指導者だった冷戦時代の1956年のことだという。

 ピラミデンでは当時、約1200人のロシア人が暮らしており、4階建てのビル数棟のほか、病院、学校、サッカー場、さらには鶏や牛を飼育する農場も建設された。市民センターの前には、旧ソ連の街ではおなじみとなっているロシア革命の指導者ウラジーミル・レーニン(Vladimir Lenin)の胸像が今でも残されている。

 サーシャさんは、太陽が昇らない厳しい冬の間には島を離れるが、3月にはまた喜んで島に戻って来る。ここ数年、スピッツベルゲン島を訪れる観光客はますます増加しており、まるでタイムスリップしたような感覚が味わえるピラミデンは人気の観光スポットとなった。

 2007年には空き家の1つを改築し、24の客室を備え、木製の工芸品やウオツカを目玉にしたホテルも誕生している。(c)Relaxnews/AFPBB News