■生きるため、ウジだらけの水も土も腹の中に

「そうしたら上からガソリンが、タンク(に)穴あいてるから(もれ落ちてきて)かぶってるでしょう。まず、苦しくて苦しくて死んじまうかと思った。なんとか、鼻だけでもつぶれた座席から外へ出たいと思って、右手がまだ使えたから、これで、あの大きな飛行機(から)…(中略)…もう爪は全部とれちゃう、もう骨が出てきている。それでも、生きようと思うから一生懸命に掘って顔だけだした」「顔だけ出たらねえ、今度はそれはまた欲が出て。猫だって顔だけ出れば出られるっていうんだから、なんとか出ようと半日じゅう掘った。よくやったと思いますよ。もう人間の意識がないんだもの。それで、ようやく機体へ足を踏みかけて、肩はすりむけて真っ赤に血が出る、…それでも外へ出た」

「出たら今度は水が欲しい。どっかに水ないかなあと思ってこう見たところが、20メートルばかり向こうに、なんか、低いところがありそう。そこまで、どうです、這って行った。そうしたらそこに、おかげさまで水があって中にウジみたいなミミズみたいな、かねちょろみたいなへんな虫がいっぱい。それきれいに飲んじゃった。そこへたまっている土までたべちゃった。人間なんてそこまでいっちゃうんです。ねえ。ところが、その土だってここ(と腹部を指して)へ入ると満足感が得られる。最初はこんなか(腹の中)でウジ虫みたいのが動いているから嫌だったんだけれどもそれもみんな死んでくれて、栄養になる。だから人間なんてねえ。極端なものだなあ、とそのとき初めて思った」

「そしてその時、水を飲んだら、なんか冷静になって、頭が。これはしょうがないから痛いから、どうしたらいいか…(中略)…拳銃を肩からかける紐でこれをここへ(腕を頭の上へ)くくりつけた。いままでよりも痛くない。あ、痛くねえや。がまんできる」

「そして、これからどうしようかなあ、と思って立ったら、向こうから、顔中血だらけのパイロットがよろよろよろよろ歩いてくる。あれ、同じパイロット来たぞ。よく見たら、3人乗りの佐藤さんという、私たちが援護していた操縦者、それが、けがしちゃって、顔中血だらけなんだ」