【7月31日 AFP】ギリシャでは、道端には見放された数百匹のネコがうろつき、首都アテネ(Athens)の動物園では一部の動物の餌が不足している。経済危機から必死に抜け出そうとする同国で、苦しんでいるのは人間だけではないようだ。

 アテネで唯一の動物園の設立者でフランス人のジャンジャック・ルシュー(Jean-Jacques Lesueur)氏は、イルカ6頭に与える冷凍魚、6000ユーロ(約80万円)分を注文しようとしていた。普段であればごく簡単なはずの注文も今はそうではなくなっている。

 欧州連合(EU)らとの金融支援交渉の行方に懸念を抱いた国民が預金を引き出そうと銀行に殺到したことから、ギリシャ政府は厳しい資本規制を導入した。

 規制により、ギリシャからの資金流出は食い止められたが、海外と取引をする国内の企業には大きな痛手となった。海外への支払いは全てギリシャ政府の承認が必要になり、承認には時間がかかることから、不信感を抱いた取引先はギリシャの企業に前払いを要求した。

 規制は先週、部分的に緩和され、ルシューさんはようやくイルカの餌代の支払いを承認された。

■捨てられるネコたち

 一方、アテネで飼い主のいないネコに餌を与えるなどの活動をしている慈善団体「ナイン・ライブズ(Nine Lives)」でボランティア活動しているある女性は「純血種のネコが捨てられることが本当に多くなった」と話す。

 さらに女性は、「数年前、ギリシャにはまだお金があって、人々はペルシャのような高価なネコを買い求めていた。ところが今は、飼い主に金銭的な余裕がなくなったか、もしくはそうしたくないのか、獣医師やグルーミングの費用が負担できず、ネコを捨ててしまう」と説明した。

 ギリシャの失業率は25%に上り、捨てネコの里親になろうという人はほとんどいない。

 慈善団体「アニマル・アクション・グリース(Animal Action Greece)」のエブゲニア・マタラグカ(Evgenia Mataragka)氏も、ここ6か月間で捨てられたペットの数が「大幅に増加」したと話す。捨てられたペットは、大きな都市では大抵の場合、飢え死にすることもないが、島では、特にネコなどは、観光客がいなくなると多くが餓死してしまうという。

 ナイン・ライブズもアニマル・アクション・グリースも海外からの寄付に頼るようになってきている。マタラグカ氏は「ギリシャでは皆、問題を抱えている。誰も援助などできる状態にない」と話した。(c)AFP/Aurélia END