【7月27日 AFP】環太平洋連携協定(Trans-Pacific PartnershipTPP)の交渉が大詰めを迎える中、反対派は、投資家を保護する条項が大企業の影響力を強め、国家主権を損なうとの懸念を強めている。

 環太平洋12か国が交渉に参加し、成立すれば世界貿易の4割を包含することになる野心的な協定は、5年以上に及ぶ交渉を経て今週、ハワイ(Hawaii)で開かれる首席交渉官会合で合意に至る可能性がある。

 交渉を主導する米国は、TPPが貿易障壁を緩和し、雇用を増大させ、企業の法的保護を強化することで投資を促進すると主張する。だが反対派は、TPPは国家の利益や個々の消費者よりも多国籍企業を優遇するものだと批判している。

 とりわけ反対派が問題視しているのが、「投資家対国家間の紛争解決条項(ISDS)」だ。この条項が協定に盛り込まれると、外国企業が国際的な仲裁機関などを通じて国家政府を相手取った訴訟を起こすことが可能になる。そのため各国政府が莫大な賠償請求訴訟を起こされ、保健・環境関連法案を導入できなくなる恐れがあると反対派は指摘する。こうしたリスクは、資金力に乏しい発展途上国で特に大きいという。

 知的財産権に詳しい豪クイーンズランド工科大学(Queensland University of Technology)のマシュー・リマー(Matthew Rimmer)氏は、AFPの取材に次のように説明した。

「TPPの下では、多国籍企業を中心に投資家たちが政府に対して訴訟を起こすことができるが、政府は投資家を相手にした訴訟は起こせない」

「それゆえ、(TPPは)非常に一方的な制度であり、国内の投資家の利益にはならない特権を外国の投資家に与えることになり得る」

 国連貿易開発会議(UNCTAD)の統計によると、企業が政府を相手に起こした訴訟件数は近年、世界的に増加している。そのうち8割は、米国、カナダ、一部EU諸国といった先進国の投資家が起こしたものだという。(c)AFP/Glenda KWEK