【7月23日 AFP】高齢に伴い視野の中心部が見えにくくなる眼病「加齢黄斑変性」を患う80歳の英国人男性が、網膜に埋め込んだ電極を介して眼鏡に取り付けた小型カメラの映像を脳に伝える「人工眼」により、一部を残して失っていた視力の大半を取り戻した。加齢黄斑変性の患者で人工眼の効果が確認されたのは、世界で初めてという。

 英マンチェスター大学(University of Manchester)は22日、引退した技師のレイ・フリン(Ray Flynn)さん(80)の手術が成功したと発表した。手術は6月中に行い、今月1日に装置を作動させたという。

 4時間に及ぶ手術を主導したマンチェスター大のパウロ・スタンガ(Paulo Stanga)教授は、フリンさんの「経過は非常に素晴らしく、人や物の輪郭がとらえられるようになった」と説明した。同教授によれば、フリンさんが患っている萎縮型の加齢黄斑変性は欧米の失明原因の第1位だが、治療法がない。社会の高齢化に伴い、患者は年々増えている。

 今回使われた技術では、小型カメラが捉えた映像を細かい電気信号に変換し、網膜の表面に埋め込んだ電極に無線で送信。電極が残った健康な細胞を刺激することで、脳に光パターンを再生する。患者がこの光パターンを完全に読み取れるようになれば、視力を取り戻せる。

 マンチェスター大の声明によるとフリンさんは今、大好きな地元サッカーチーム、マンチェスター・ユナイテッド(Manchester United)の試合を観戦したり、庭いじりをしたりできるようになるのを心待ちにしているという。(c)AFP