【7月14日 AFP】地球温暖化による食料不足と水不足は、大規模な人口移動や、資源をめぐる争い、国家機能の喪失などを引き起こし、紛争とテロの温床を助長する恐れがあるとする国際報告書が13日、発表された。

「気候変動のリスク評価(Climate Change, A Risk Assessment)」と題した報告書は、科学者、政策アナリスト、財政・軍事リスク専門家など世界11か国・40人以上の専門家が、政策立案者らの指針として作成したもの。温暖化が進んだ地球上に暮らす人類の未来について、悲観的な展望を示している。

 報告書によれば、気温と海面の上昇によって生産性のある土地の面積が縮小するにつれ、人々が相争う理由は多数生じる。特に中東やアフリカで、現時点で情勢が不安定化している地域では、そうなる可能性が高いという。

 報告書は、産業革命以降の世界の平均気温は現在までに0.8度上昇したが、それだけで世界は「数々の重大な問題」に直面していると指摘する。

「大きな気候変動は、国内の治安や国際安全保障に甚大なリスクを及ぼしかねない」「過度の水ストレスと、生産性の高い土地をめぐる争いは、どちらも紛争の原因となり得る」という。

 近い将来には、昨今の難民問題さえ、気候変動に関連する食料・水不足と紛争からの避難民の数に比べれば取るに足らないとみなされるようになるかもしれない。「一部地域では、移住は選択肢ではなく、不可避なものとなり、史上類のない規模で起きる可能性がある」と報告書は記している。

 さらに、「人道支援を提供する国際社会の能力は、既にフル稼働の状態で、たやすく圧倒される恐れがある」ため、安定した先進国の政府までもが危機に追い込まれかねないという。

「気候変動は、多くの国々で同時に環境ストレスを増大させるだろう」と報告書は述べ、たとえ優れた政府であっても、こうしたストレスが重なった状況に対処することは不可能かもしれないと指摘している。

 その上で、「統治が行き届かない領土の拡大は、テロリズムのリスク増大につながると考えられる」と説明。国家機能の喪失や国家の崩壊によって生じる権力の空白状態は、テロ組織の温床となり、社会から取り残され公民権を奪われた人々が増えて、テロ組織に勧誘されていくと報告書は警告している。(c)AFP/Mariette LE ROUX