【7月12日 AFP】1990年代のボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中、ボスニア東部スレブレニツァ(Srebrenica)でイスラム教徒8000人近くがセルビア人勢力に虐殺された事件から20年を迎え、11日に追悼式典が行われた。しかし出席したセルビアのアレクサンダル・ブチッチ(Aleksandar Vucic)首相に群衆から石やペットボトルが投げつけられる騒ぎがあり、首相は退席を余儀なくされた。

 スレブレニツァでの虐殺は、欧州で発生した残虐行為として第2次世界大戦(Warld War II)以来最悪とされている。紛争ではボスニアの3民族が内戦に突入し、セルビアはその最中から終結後にかけてボスニアのセルビア系住民を支持していた。

 この日の式典でブチッチ首相は、虐殺の犠牲となった未成年者を含む男性イスラム教徒たちの慰霊碑に献花したが、その際に群衆が「神は偉大なり」と叫んで首相に石を投げつけ始めた。首相は群衆から罵声を浴びせられる中、護衛らがさした傘の下に逃げ込んだ。新たに身元が判明した犠牲者の埋葬に参列者の注意が移り、イスラム教指導者(イマーム)の祈祷が行われると、群衆の怒りはようやく収まった。

 式典にはブチッチ首相のほか、ビル・クリントン(Bill Clinton)元米大統領などの大勢の要人や数万人の住民が参列した。ボスニア政府は、ブチッチ首相が「和解を目指し、犠牲者を追悼するつもりで」スレブレニツァを訪問したと述べ、投石を厳しく非難。また、今回の騒ぎについて「全ての海外の要人」に陳謝した。

 また、欧州連合(EU)のフェデリカ・モゲリーニ(Federica Mogherini)外交安全保障上級代表は、ブチッチ首相への襲撃が「この追悼の日の精神に反している」と語った。同代表は、首相の式典出席を「歴史的な決断」と称賛していた。

 ブチッチ首相は騒ぎの後、セルビアの首都ベオグラード(Belgrade)に戻った。首相は記者団に対し、投げつけられた石が口元に当たったものの、けがはなく、眼鏡が割れる程度にとどまったことを明らかにした。また、「セルビア人とボシュニャク人(イスラム教徒)の間に真の友好関係を築きたいという、われわれの誠実な意図が一部に認められなかったのは残念だ」と述べた上で、「(ボスニアのイスラム教徒に)引き続き手を差し伸べ、和解政策を続ける」と明言した。(c)AFP/Calin NEACSU, Rusmir SMAJILHODZIC