【7月10日 AFP】(写真追加)パレスチナ自治区ガザ地区(Gaza Strip)を実効支配するイスラム原理主義組織ハマス(Hamas)が、同地区に入ったイスラエル人2人を拘束していると、イスラエル国防省が9日、発表した。新たな人質事件ではとの懸念が生じている。

 イスラエル国防省は、「信頼できる情報によると」、エチオピア系イスラエル人のアブラハム・メンギスツ(Avraham Mengistu)さんが「本人の意思に反してハマスによりガザで拘束されている」と発表した。

 国防省が出した声明によるとメンギスツさんは、昨年夏のイスラエルとハマスらとの紛争直後の9月7日に、「自主的に境界フェンスを乗り越えて」ガザに入ったとしている。

 同省はさらに「ガザで拘束されているもう一人のアラブ系イスラエル人の事件についても対応中」だとしているが、詳細は明らかにしていない。

 モシェ・ヤアロン(Moshe Yaalon)国防相は、2人は「ハマスに拘束されている」としており、またベンヤミン・ネタニヤフ(Benjamin Netanyahu)首相も「2人についてはハマスに責任がある」としている。

 イスラエルは2011年、それまで5年間ハマスに拘束されていたイスラエル軍兵士のギラド・シャリート(Gilad Shalit)さんの解放と引き換えに、イスラエルが拘束していた1000人以上のパレスチナ人を解放した。このような前例を作ったことで、さらなる人質事件を引き起こす恐れがあるという批判も上がっていた。

 事実、あるハマス関係者は、イスラエルが昨年再拘束した人々をまず解放しない限り、現在拘束されている2人のイスラエル人の解放交渉は始まらないと話しており、シャリートさんの事例が今回の事件に影響していることがうかがえる。

 イスラエル政府は国民に対し、ガザ入りを禁止している。イスラエルが拘束しているパレスチナ人の解放をはじめ、譲歩を引き出すための取り引きの駒に使われる恐れがその理由の一つとなっている。(c)AFP/Michael Blum