【7月7日 AFP】オーストリア政府は6日、英政府が自国内の新たな原発建設に拠出する補助金はEU法に違反するとして、欧州司法裁判所(European Court of Justice)に提訴したことを明らかにした。

 ウェルナー・ファイマン(Werner Faymann)首相は声明で、「補助金はEU全加盟国を広く利する最新技術を支援するためのものであり、原発はその趣旨にそぐわない」と指摘した。

 欧州委員会(European Commission)は昨年10月、英南西部サマセット(Somerset)州で計画されているヒンクリーポイントC(Hinkley Point C)原発について、英政府が資金計画を修正したことを踏まえて承認していた。

 本計画の費用は、当初の試算では160億ポンド(約3兆1000億円)と見込まれていたが、EUは現在245億ポンド(約4兆7000億円)かかるとみている。

 オーストリアは、この計画がEU法に違反するとともに、エネルギー市場をゆがめる恐れがあると訴えた。

 これに先立ち、ドイツとオーストリアのエネルギー企業10社も連名で、ヒンクリーポイントC原発に対する欧州司法裁判所への提訴の構えを表明していた。

 反対派は欧州で風力や太陽光といった再生可能エネルギーの使用が進み始めている中、同原発の開発計画は原子力エネルギーへの無用な支援に当たるとしている。

 これに対し欧州委員会は、エネルギー源の選択はいかにそれが論争を招くものであっても、各加盟国が判断すべき問題だとしている。

 英政府は、自国内の既存の原発の大半は2023年までに閉鎖される予定であり、同国のエネルギー安全保障にはヒンクリーポイントC原発が不可欠だとの主張を繰り返している。(c)AFP/Nina LAMPARSKI