【7月3日 AFP】何年も続く経済不況に、悪化する一方の失業率、そして1週間に及ぶ銀行休業――デフォルト(債務不履行)危機に揺れるギリシャで、将来を不安視した若者たちが国外へ脱出する動きが加速している。

「ギリシャには将来がない」。家計を助けるため大学中退を余儀なくされたダニ・ヨルダケさん(21)は、ため息をついた。「美しい国だ。でも、ここに住んで毎日、苦しんでいる自分の姿は想像できない」

 若年層の失業率が50%近くに上る中で欧州連合(EU)などとの金融支援交渉が決裂したギリシャでは、ダニさんと同年代の若者たちが続々と出国の準備を進めている。起業家支援団体「エンデバー・グリース(Endeavor Greece)」によれば、2010年のギリシャ経済危機以降すでに20万人以上のギリシャ人が雇用不足や低賃金、はびこる汚職、実力で評価されない社会などに見切りをつけ、国を去った。

 科学者のクリストス・ペノスさん(32)がノルウェーへ旅立ったのは2013年のこと。ギリシャでは研究職の募集がほとんどなかったため、ノルウェーの大学で研究者になった。「兄弟はスペインに、親友はドイツに住んでいる。英国、ノルウェー、スウェーデン、オランダ、ベルギー、フランス、ポーランドにも友人が大勢いるよ」

 当初は2~3年で帰国する予定だったが、今はもっと長居するつもりだというペノスさん。それでも、気持ちは揺れる。「友人や家族、そして何よりも太陽とギリシャ料理が心から恋しい」

 失業中の土木技師、ヤニス・グリゴリオウさんには、債務危機の収束を待つ余裕などない。仕事が見つかるチャンスがまだしも転がっていそうなアラブ諸国への移住を考えている。「ひどい状況だ。4~5年前にこうなると分かっていたら、調理師や美容師になる勉強をしていたよ。それならギリシャでも働き口があったかもしれない」

 ギリシャ人、とりわけ若者の海外移住は「目新しい現象ではないが、債務危機に陥ってから大幅に増えた」と、テッサロニキ・アリストテレス大学(Aristotle University of Thessaloniki)のロイス・ラブリアニディス(Lois Labrianidis)教授は指摘する。ギリシャ政府から経済政策への助言を求められている同教授は、付加価値の高い産業を創出して投資を拡大することで、大学を卒業した若者が国内にとどまれる環境を整える必要があると考えている。(c)AFP/Pauline FROISSART